2007年前期 第6回 細胞生物学セミナー

日時:6月5日(火)17:00~

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

 

Magnetic intensity affects cryptochrome-dependent

 responses in Arabidopsis thaliana

Ahmad, M.,Galland, P., Ritz,T.

Wiltschko,R.,Wiltschko,W.(2006)

Planta, 225 : pp. 615-624

 

地磁気は磁気を感知する生物にとって偏在する情報源であり、渡り鳥は地磁気情報を利用して回帰してくると言われ、近年の研究により、磁気を感じる生物は動物だけでなく、植物も磁気を受容する可能性が示唆されている。

鳥の磁気コンパスは環境における光に影響を受け、光のうち緑色から青色光下では正常な渡りを示すが、黄色や赤色光下では示さなくなることが示されている。またこの磁気コンパスの地球磁場に対する感度は、ラジカルペア・プロセスを通した光受容体の電子伝達過程に対する、この程度の弱磁場の影響と符合する。このようなことから、青色光受容体であるクリプトクロムが磁気受容分子の候補であると考えられている。

クリプトクロムは最初、高等植物において青色光を吸収する光受容体として見つかり、成長・発達や日周性の様々な反応に関連していることが知られている。シロイヌナズナではクリプトクロムの遺伝子、cry1cry2が胚軸の成長阻害を含む青色光に依存した反応を取り次ぐ。

そこで本研究では、弱磁場が植物における生理反応に影響を与えるか否かということ、観察された影響が、クリプトクロムに媒介される特異的な反応か否かということを検証するため、指標とする生理反応として、胚軸成長、アントシアニンの蓄積、CRY2タンパク質の安定性を選び、これらに与える磁場の影響をシロイヌナズナを用いて調べた。

その結果、シロイヌナズナの周囲の弱磁場の強度を33~40μTから500μTに増加すると、クリプトクロムが関わる青色光下ではシロイヌナズナの成長抑制が促進され、フィトクロムが関わる赤色光下もしくは暗色下では促進されないことがわかった。

磁場強度の増加はクリプトクロムが欠如したシロイヌナズナ変異体の胚軸の成長に影響する。それに加えてクリプトクロムに左右される別の反応である青色光によるアントシアニンの蓄積や、CRY2タンパク質の分解反応は強磁場環境により増進されることが示された。

これらの発見から、高等植物はクリプトクロムによるシグナル経路とリンクしている反応において、磁場に影響を受けやすいことが示された。クリプトクロムは光を受けて励起した後にラジカル・ペアを形成することから、今回得られた結果は磁気受容のラジカル・ペアモデルによって最も良く説明できると考えられる。これらのことから動物と植物の磁気受容が、両者に共通な、光を受けて励起したクリプトクロムの物理的特性を基礎とする興味深い並行な現象であるということが示唆された。

         地球科学科の僕ですが興味の持たれた方はぜひ来聴ください! 深山 潤一