2007年度前期 第7回 細胞生物学セミナー

日時:6月18日(火) 17:00~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Effect of salinity on xylem structure and water use in growing leaves of sorghum

BAUM, S. F., TRAN, P. N., and SILK, W. K. (2000)

New Phytol, 19, 270-280

 

成長しているソルガムの葉における木部構造と水分利用に対する塩分の影響

 

灌漑作物の発育における塩分の影響は世界的に問題になっている。適度に耐塩性のあるソルガム(Sorghum bicolor)では、塩分の影響を受けた葉で成長割合の減少と栄養分沈着の空間的なパターンで変化が見られることが分かっている(Bernstein et al.,1993,1995)。塩分はカルシウムの組織における沈着速度と含量を減少させる。成長中の単子葉植物の葉においては、水分は原生木部によって供給され広がるということが分かっている(Sharman1942、Esau1953)。このことを前提に本研究では、蒸散と生長中の水分利用に関する水分生理と通水構造についていくつかの側面から実験した。本研究における最終的な目的は原生木部半径の水の蓄積速度(局所的な成長速度)に対する依存性を表すべき法則を見つけ出すことである。

ソルガムはホグランド溶液を含む苗床に播種した。発芽後8日間たった後で、塩化ナトリウム水溶液を与えることで3日間塩分処理下を行い、11日後塩化ナトリウムは最終的にの濃度に到達させた。塩分の影響を受けたソルガムの葉の成長帯における木部要素の幅および数を測定した。その結果、塩分の影響を受けて原生木部と後生木部は対照区よりも細くなったが、同時に葉の幅や断面積が減少していたため、断面積あたりの木部断面積は変化しなかった。染色剤エオシンを用いて、機能している導管の割合を調べたところ、対照区ではほとんど前部であったが、塩分処理区では半分に低下していた。

また、塩分処理が蒸散にどのような影響を与えているかを、水の重量変化に基づいた蒸散量(水の流れ)測定により調べた。塩分処理により、蒸散量(水の流れ)は大きく減少しており、そのことは葉の表面積の減少により説明できると考えられる。しかし一方で、塩分処理により、葉の重量あたりの蒸散量(水の流れ)も減少しており、特に発達の後期において顕著であった。また、様々な位置の葉において、拡散低抗を用いて塩分処理が気孔コンダクタンスに与える影響を調べたところ原生木部や後生木部の直径の変化とは直接的な関係がないことが分かった。これらとは対照的に、原生木部の半径は、公表されている水の蓄積速度(局所的な成長速度)と強く関係している(前者の二乗が後者に比例する)ことが分かった。この結果から、単子葉植物の葉の通水構造の変化はおそらく局所的な成長速度の変化をもたらす原因となっている可能性が示唆された。

 

興味をもたれた方は是非御来聴下さい。 中野 美穂