2007年度前期 第9、10回 細胞生物学セミナー
日時:7月10日(火)16:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Enhanced Gravitropism of
Roots with a Disrupted Cap Actin Cytoskeleton
Hou G., Mohamalawari R. D., and
Blancaflor B. E. (2003)
Plant Physiol., 131,
1360-1373
根冠のアクチン細胞骨格を破壊した根では、重力屈性が強化された
アクチンは、重力応答において重要な役割を担うことが提唱されている。また、役割を解読する手段として、迅速性や技術の単純性の面から阻害剤が用いられている。しかしながら、アクチン阻害剤を利用した重力屈性の研究結果は、重力屈性に効果がない、抑制的な効果もしくは促進的な効果がある、などたびたび矛盾してきた。今回の研究ではこの問題点を明らかにするために、提示時間解析やクリノスタットを利用した屈性の発達の解析など、付加的なパラメーターを用い、トウモロコシの根において アクチン脱重合剤であるLatrunculin B(Lat B)と微小管脱重合剤であるoryzalinが屈性にどのような
影響を与えるかを検証した。
その結果、いずれの阻害剤で処理した根においても屈性は確認できたが、oryzalinで処理した根に比べLat Bで処理したトウモロコシの根では、より強く、早い屈性が観察された。さらに、より高濃度のLat B 処理は根の生長への強い抑制効果にもかかわらず、重力屈性を促進した。
我々は、このアクチンの変化により観察された、根での強められた重力応答の重要性をさらに理解するためにクリノスタットを利用した。クリノスタットは生物試料を回転させる装置であり、これを用いることで、一側性の重力刺激を効果的に除去することができる。興味深いことに、lat Bで処理した根は、クリノスタット上で2時間を越えて過去の垂直方向への屈曲を維持した。クリノスタット上での根の強い屈性が、Lat Bを除去したことによるアクチンの再形成に関係しているのかどうかを調べるために、根の屈性がおこっている期間でアクチンを可視化したが、根の伸長領域の表皮、皮層さらに維管束中組織細胞でもアクチンネットワークはほとんど確認されなかった。
重力屈性におけるアクチン破壊の助長的な効果を確認するとともに、重力応答を引き出すために必要な1g環境下での最小の曝露時間として定義する提示時間を算出したところ、oryzalinを処理したものやコントロールに比べ、LatBで処理した根は感受性が3倍高いことが明らかになった。
さらに、根冠と伸長領域で局所的にLat B処理することで根冠もしくは伸長領域のアクチンのみを破壊し、強い屈性応答を誘導することができるかどうかを調べた結果、Lat Bを根冠に処理した根でのみ、同様な強い重力屈性が観察された。Lat Bを処理する前に根冠を除去した場合、強い屈性が生じないことも示された。
これらの結果から、根冠のアクチンが、根の正常な垂直生長に関与していることが示唆された。
興味を持たれた方は、ぜひご来聴ください。 安藤名央子