2007年度第11回 細胞生物学セミナー

日時:717()17:00~

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

Microtubule-Associated AIR9

Recognizes the Cortical Division Site at Preprophase and Cell-Plate Insertion

Buschmann,H.,Chan,J., Sanchez-Pulido,L., Andrade-Navarro,A.,M., H.Doonan,J.,and Lloyd,W.C.

Curr, Biol, 16,1938-1943, October 10,2006

 

  細胞壁で覆われ固定された植物細胞において、細胞分裂面の厳密な調整が組織や器官の形態形成での鍵となっている。植物細胞では、細胞分裂の間にG2期から前期にかけて特異的な微小管の配向である分裂準備帯(Pre-Prophase Band; PPB)が核を取り囲むように現れる。しかし、PPBは分裂中期の前に消失してしまうが、細胞板はPPBの存在した場所に形成される事から、その位置に記憶が残ると考えられている。その記憶についての一つの考え方は、PPBがその位置に何らかの分子を残すというものである。そこで筆者らはそのような分子の存在を検証するため、AIR9auxin-induced in root culturre)という微小管に結合する新規のタンパク質に着目しその働きを調べた。AIR9はトリパノソーマ類と陸生植物に見られるタンパク質であり、その遺伝子は雄性および雌性不稔を起こす原因遺伝子として見つけられた。AIR9の細胞分裂における昨日解析のため、筆者らはタバコBY-2系統からAIR-9 cDNAGFP融合タンパク質を発現する形質転換体を作成した。この形質転換体を利用して様々な時期のAIR9タンパク質の働きを調べた。

  GFP-AIR9BY-2細胞の表層微小管やG2期のPPBと共局在した。GFP-AIR9は、有糸分裂中はいったん消失し、その後隔膜形成体に再配列した。その後、GFP-AIR9は皮層の隔膜形成体と接触し、PPBが位置付けていた表層の分裂面の位置を正確にラベルした。細胞板挿入後、GFP-AIR9は形成された細胞板の輪郭部にトーラス状に局在した。これが起きるのは表層微小管が再形成される前のことである。次に、トランケーションしたAIR9遺伝子のコンストラクトを、シロイヌナズナ培養細胞で一過的に発現させる実験を行ったところ、AIR9の微小管結合部位と分裂面への局在に必要な部位は独立した部位であることがわかった。CIPCで処理された細胞では、隔膜形成体は正常な位置に加え、異所的な部分にも形成される。この細胞において、正常な位置に発達した細胞板の挿入位置ではAIR9のトーラス状の局在が見られたのに対し、異所的に発達した細胞板の挿入位置では見られず、また細胞板自体も未熟なままであった。この事は、AIR9PPBの位置を記憶する未知のpositiveなマーカーと相互作用している可能性を示唆する。

  以上のことからAIR9タンパク質は細胞板を細胞分裂の分裂面に接触させ、正常に成熟させるメカニズムの一部である事が示唆された。   

     興味のある方は是非ご参加ください。                     増田優司