2007年度 第14回 細胞生物学セミナー
日時:10月16日(火) 17:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
An ARF-GEF acting at the Golgi and in selective
endocytosis in polarized plant cell
The, O,K., Moore ,I.(2007) Nature 448:493-496
ARF-GEFは植物の極性細胞においてゴルジ体と
選択的エンドサイトーシスに働く
植物界において、原形質膜輸送の経路は独自に多様化したことが状況証拠から示唆されているが、実証された例はほとんどない。グアニンヌクレオチド交換因子(ARF-GEFファミリー)は、真核生物の小胞輸送にとって必須のタンパク質である。ARF-GEFは、ゴルジ体近傍での輸送小胞を調節する高分子型と、細胞膜とエンドソームの間の輸送やアクチン細胞骨格の再構築を調整する低分子量型に分類されている。植物界に見られるARF-GEFは祖先型であるBIG(BFA阻害性グアニンヌクレオチド交換因子)とGBF(ゴルジ体BFA抵抗因子)の2種だけである。シロイヌナズナのGBFタンパク質GNOMはエンドソームからのリサイクルにのみ関与していると考えられている。今回著者らは、3つあるGBFタンパク質のうちGNOMに近縁のGNOM-LIKE1(GNL1) の機能解析を行った。
著者らは、分泌されるGFPタンパク質secGFPを実生細胞内に蓄積する変異体をスクリーニングすることにより、原形質膜への膜輸送能力を欠いた突然変異体gnl1を単離した。gnl1ではゴルジ体の直径が野生型と比べ50%増加していた。従って、GNL1はゴルジ体の組織維持の役割を持っていることが考えられる。しかし、gnl1においてゴルジ体の変化が大きくなかったことと、gnl1-1,gnl1-2の生存率が高いことからからGNL1の機能は必須のものではないか、他のARF-GEFと機能が重複していることが示唆された。そこで筆者らは,ARF-GEFの選択的な阻害剤であるbrefeldin A(BFA)を投与してこれらの可能性を調べた。gnl1変異体において、BFAは野生型で影響のない濃度で実生の生長を激しく阻害した。さらに、BFAを投与されたgnl1の根では、極性を持つ細胞膜マーカーであるオーキシン排出キャリアーPIN2の内部移行が選択的に阻害された。従って、GNL1はBFA抵抗性のGBFタンパク質で、ゴルジ体と選択的エンドサイトーシスにはBFA感受性ARF-GEFと共に機能することが示唆された。
植物のエンドサイトーシスによる輸送の進化は、GBFファミリー内での新規の機能付与に伴って起きたが、他の生物界ではARF-GEFファミリーを増やすことによって全く独自に起きたと考えられる。
来聴を歓迎します。増田 優司