2006年度 前期第1,2回細胞生物学セミナー
日時:5月9日(火) 16:30〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
A proteoglycan mediates
inductive interaction
during plant vascular
development
Motose H., Sugiyama M.,
and Fukuda H.(2004)
Nature, 429:873-878
導管と篩管から構成される植物の管状システムは、水分、養分、シグナル分子を運搬するために、植物体を通して途切れることなく、連続して形成されている。このような特徴的な発達は、導管分化を連続して誘導するために、いくつかのシグナルが機能している可能性を示唆する。
これまでに、単離したヒャクニチソウの葉肉細胞を管状要素へ分化させる培養システムを確立し、in vivo での導管発生を可能にすると共に、細胞間相互作用の直接的な解析、シグナル分子の単離を行ってきた。その結果、早期の管状要素が近くに存在する細胞を管状要素分化の経路に引き寄せること、またこの作用が、ザイロジェンと名付けた、局部的に動いている分泌系の因子によって媒介されていることがわかってきている。
今回の研究は、このザイロジェンの構造や植物体での機能を明らかにすることを目的として行った。ザイロジェンをコードするcDNAを生成し、この遺伝子をヒャクニチソウザイロジェンタンパク(ZeXYP1)と名付た。解析により、ZeXYP1がアラビノガラクタンタンパク(AGPs)と非特異性脂質転写タンパク(nsLTPs)の両方の性質を備えた混合型分子であることがわかった。さらに、ZeXYP転写物とザイロジェンは分裂組織、前形成層、木部に局在していること、木部では、分化途上の管状要素の細胞壁の片側に極性をもって蓄積することがわかり、早期の管状要素が直接的に隣の細胞に働きかけることが示唆された。この蓄積は、転写後におけるオーキシンとサイトカイニンの相互依存的な活性によって調節されることも示された。
また、ザイロジェンタンパク質をコードする相同遺伝子がシロイヌナズナには二つ(AtXYP1,AtXYP2)あり、これらを欠く二重変異体では、維管束の形成異常、不連続な葉脈、不適切に相互接続した管状要素、葉脈の単純化といった、明らかな形態的欠如が見られた。これらのことから、極性を持って分泌されたザイロジェンが、隣接した細胞を維管束分化経路に引き込むことで、次々と維管束の連続的な分化を引き起こすことが示唆された。
興味を持たれた方はお気軽にご参加ください。 安藤名央子