2006年度 前期第13,14回 細胞生物学セミナー
日時:7月11日(火) 16:30〜
場所:総合研究棟6階 クリエ−ションルーム
A silicon transporter in rice
Jian Feng Ma, Kazunori Tamai, Naoki
Yamaji, Namiki Mitani, Saeko Konishi, Maki Katsuhara, Masaji Ishiguro, Yoshiko
Murata and Masahiro Yano(2006)
Nature 440, 688-691
イネのケイ素輸送体
ケイ素は土壌中に酸素についで2番目に多く存在し、すべての植物に含まれている。ケイ素は、植物の成長に有益であり、植物の倒伏を防ぐとともに害虫や病気などのストレスの抵抗性を高めることによって、植物が非生物的ストレスおよび生物的ストレスを克服するのを助けている。しかしながら、植物によってケイ素集積は乾燥重量で0.1%から最高10%の範囲で大きな違いがみられる。この違いはケイ素を集める根の能力の違いと考えられる。特にイネはシュートで最大10%までの乾燥重量を蓄積できる。ケイ素はイネの持続的な高生産に不可欠であるが、ケイ素の摂取の原因となる分子機構は知られていなかった。
著者らはケイ素を吸収しないイネの突然変異体と通常のイネの遺伝子配列を比較して、ケイ素集積を制御しているLow
silicon rice 1(Lsi1)遺伝子を特定した。この遺伝子は、aquaporin familyに属し、根で構成的に発現している。Lsi1の発現の抑制はケイ素摂取の減少をもたらした。さらに、カスパリー線が存在する部位である、外皮および内皮細胞の遠心側の原形質膜にLsi1が局在していることを発見した。
また、Xenopusの卵母細胞においてLsi1をコードするcRNAを注入することによって、Lsi1の発現が、ケイ素に特異的な輸送活性を示すことを観察した。
ケイ素輸送体の同定は、植物のケイ素集積機構の解明および、遺伝子組み換えによる根のケイ素摂取容量の改良に役立つ。そして、それらのことはさまざまなストレスへの高い抵抗性を示す作物を生み出すための新たな方法に繋がるであろうと、著者らは結論付けている
興味を持たれた方はお気軽にご来聴ください。赤井 由紀