2006年度  後期第1,2回  細胞生物学セミナー

日時:103日(火) 16:30

場所:総合研究棟6階 クリエションルーム

Cellular dissection of the degradation pattern of cortical cell death during aerenchyma formation of rice roots

Kawai,M., Samarajeewa,P.K., Barrero,R.A., Nishiguchi,M., Uchimiya,H. (1998)

Planta 204, 277-287

 

イネの根における通気組織形成における皮層の細胞死の分解パターンの細胞分析

 

プログラム細胞死は高等植物の様々な発達上の過程で観察されている。このような出来事は発達中の管状要素、根冠細胞、花粉発達を維持するためのタペータムでの細胞分解、生殖器形成やその他の過程でも特徴的である。そして、プログラム細胞死に関連した個々の細胞の能力は多細胞生物の発達に不可欠である。

本論文では、細胞崩壊が起こる前の細胞の現象を通気組織形成におけるイネ(Oryza sativa L.)の根の皮層で調べた。イネの根では、通気組織は非常に急速に形成され、またイネの根の皮層の細胞、及び皮層の細胞死の数はトウモロコシやヨシなどの種より少ない。イネの根においては、細胞死と関連した特有の細胞の位置が観察できる。イネ植物の70日齢根では、高度に発達した通気組織が皮層に存在している。しかしながら、皮層の細胞のすべてが崩壊するというわけではなく、細胞崩壊は皮層の中間の特定の位置で始まった。これらの細胞は周辺に向かって位置する細胞の形とは異なっていた。そのうえ、細胞崩壊は皮層の中間の細胞における原形質膜の酸性化と完全性の損失に先行された。細胞崩壊は隣接している細胞の死に引き続き、放射状に続いた。また、著書らは根の皮層での細胞間結合を理解するために、ルオレッセインイソチオシアネート(FITC)と結合した異なるサイズの分子の顕微注入実験を行った。根の皮層においては9.319.6kDaの分子排除限界を示すことがわかった。そのうえ、9.3kDa周辺の大きな分子は主に放射方向に移動した。それは連続しておこる細胞死の経路と一致していた。

本論文では、イネの根の皮層の細胞における細胞死の開始が、特定の細胞位置における原形質膜の酸性化と膜分解によって特徴づけられるのを証明するまた、イネの皮層細胞の解剖学的な特性と原形質連絡を通じた高分子の移動の存在の可能性について記述した。

 

興味を持たれた方はお気軽にご来聴ください。赤井 由紀