2006年度 後期第12、13回 細胞生物学セミナー 

日時 : 11月28日(火) 16:30〜

場所 : 総合研究棟6階 クリエーションルーム

STUNTED PLANT 1 mediates effects of Cytokinin, but not of Auxin,

on cell division and expansion in the root of Arabidopsis

Gerrit T.S. Beemster and Tobias I. Baskin(2000)

Plant Physiol., 1718-1727

 

シロイヌナズナの根における細胞の分裂と伸長について、

STANTED PLANT 1はサイトカイニンの影響を媒介し、だがオーキシンの媒介はしない

 

 

 植物は細胞の分裂と伸長の割合および持続時間を調節することで器官の生長を制御している。この調節は植物の発達や適応に関わる重要な問題であるが、分裂と伸長の独立した調節がどのようにしてなされるかは殆ど知られていない。分裂と伸長が二者択一のものではなく一連の過程であり、調節の過程は協調し相互依存していることもまたほとんど理解されていない。本論文ではシロイヌナズナ変異体であるStunted plant1(stp1)の根の分裂組織においてこの調節を調べた。stp1は根の伸長が野生型のものより遅い変異体である。また野生型では単位時間あたりの根の伸長率が増加し伸長速度は加速するが、stp1では根の伸長が一定の割合で進む。

 動的解析を用いてstp1と野生型、外因性サイトカイニン(1μMのゼアチン)もしくはオーキシン(30nMの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)を処理した野生型を比較し、細胞の分裂・伸長の割合とその幅の空間分布を定量した。サイトカイニン処理をした野生型はほぼすべての項目(伸長率、伸長速度、strain rate(伸長速度の相対的な増加率=加速度)、セルフラックス、細胞産生率)においてstp1の表現型を模倣した。stp1の根はオーキシン、アブシジン酸、エチレン、およびジベレリンに普通に応答するがサイトカイニンに対しては応答が弱いことから、STP1の発現の減少によるサイトカイニンレベルの変化が根の伸長を抑制すると仮定されている。(Baskin他、1995)本実験の結果はこの仮説を支持した。またオーキシンおよびサイトカイニンは根の伸長を低下させた。しかしオーキシンの伸長抑制は伸長領域が狭められ、この領域に細胞が存在する時間が短くなることが原因であり、strain rateの最大値はオーキシンによって低下しない。加えてオーキシンは分裂組織の長さを増大させた。対照的にサイトカイニンによる伸長抑制はstrain rateの最大値が低下することで起こり、伸長領域に細胞が存在する時間には影響しない。さらにサイトカイニンは分裂組織、伸長領域の長さの増大と細胞数の増加を阻害する。このオーキシンとサイトカイニンの相反する影響は、これらのホルモンの均衡が分裂組織のサイズを制御しているという可能性を示した。

 

興味を持たれた方はお気軽にご来聴ください。

前田綾子