2008年度 前期第4回 細胞生物学セミナー
日時:6月3日(火) 17:00~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
EMF genes maintain vegetative development by
repressing the flower program in Arabidopsis
Moon,Y-H., Chen,L., Pan,R.L., Chang,H-S., Zhu,T., Maffeo,D.M., and
Sung,Z.R. (2003)
Plant Cell, 15: 681-693
シロイヌナズナにおいてEMF遺伝子は花のプログラムを抑制することで栄養生長を維持する
高等植物にとっては有性生殖を起こすのに開花することが必要である。また花を増やし子孫を作るために、植物は栄養生長している間は開花を遅らせている。開花期、は遅咲き・早咲き変異体の原因遺伝子の産物として同定された開花誘導因子や開花抑制因子によって精密に制御されている。花成誘導の経路・メカニズムは精力的に研究されているが、花成を妨害するメカニズムはまだあまり判明していない。
EMBRYONIC FLOWER(EMF, 胚花成)遺伝子のEMF1とEMF2は栄養生長の維持と、花の発生の抑制に必要である。EMF1は121kDのタンパク質をコードし、これは転写調節因子であると推測されている。EMF2は71kDのポリコムグループタンパクをコードし、このタンパク質は亜鉛フィンガーモチーフとVERNALIZATION2や転写因子Suz12(suppressor of zeste12)など他のポリコムグループタンパクで保存されているVEFSドメインを含んでいる。
筆者らはGeneChipを用いてemf変異体の発現プロファイルを調べた。emf1とemf2の間で野生型と比べた場合の発現の違いはかなり重複しており、このことは2つの遺伝子の機能が類似していることと矛盾しなかった。花発生前のemf実生における発現プロファイルはシロイヌナズナの花におけるそれと類似していた。このことは発芽したばかりのemf実生がすでに生殖運命へ向かっていることを示している。発芽したばかりのemf実生は異所的に花器官遺伝子を発現しており、野生型の栄養生長はEMFによる花成プログラムが間接的・直接的に抑制されているものであることを示唆している。加えて、emf1変異体では種子発生プログラムが抑制解除されている。emf変異体はロゼットを形成しないが、co、lfy、ft変異の導入によってもemf変異体においてロゼット発生をスキップするという表現型を回復することができないことは、以前のエピスタシス解析によって示されている遺伝子発現解析ではEMF1によってCO (CONSTANS), FT (FLOWERING LOCUS T), LFY(LEAFY), SOC1(SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1)がはっきりと制御されているということは示されなかった。今回のデータはEMFに媒介される花器官遺伝子抑制メカニズムは、これらの開花遺伝子から独立していることを示唆し、筆者らは、これらの発見に基づいて、EMF媒介の新しい花の抑制のメカニズムを提唱した。
興味を持たれた方は、是非ご来聴ください。 須藤 宇道