2008年度   前期5回  細胞生物学セミナー

日時:6 10 ()    1700

場所:総合研究棟6階  クリエーションルーム

Basipetal auxin transport is required for gravitropism in

roots of Arabidopsis

Rashotte,A.M., Brady,S.R., Reed, R.C., Ante,S.J., and Muday,G.K.(2000)

Plant Physiol ,122,481-490

 

シロイヌナズナの根における重力屈性は求基的オーキシン輸送を必要とする

 

 高等植物でのオーキシン輸送の極性は、方向性が調節されたプロセスであり、オーキシン輸送は重力応答を含む重要な生長や発達のプロセスの変化をコントロールしているといわれている。オーキシンの輸送は、根において2つの異なる組織で、求基的および求頂的な2つの異なる極性によって生じる。しかしどちらの極性の輸送が重力応答をコントロールしているかは不明確であった。

そこで筆者らはシロイヌナズナの根においてindole-3-acetic acid (IAA)の極性輸送に2つの極性が生じるのか否か、また重力応答は求基的、求頂的どちらの極性輸送にコントロールされているのかを決定することを目的として研究を行った。

 まず、オーキシン輸送阻害剤であるnaphthylphthalamic acid (NPA)で根を全体的に処理すると重力応答や根のうねり、および根の伸長は阻害された。そして全自動ビデオ撮影装置を用いた解析により、NPA処理後すぐに、根の重力応答が阻害されることが分かった。また、シロイヌナズナの根における求基的[3H]IAA輸送はNPAによって阻害されるが、単なる弱酸の拡散のコントロールとして用いられた[14C]benzoic acidは阻害されなかった。

 次にNPAを局所的に処理することによって求基的IAA輸送を阻害すると、重力応答が阻害された。また、根とシュートの接続部へのNPA処理によって求頂的IAA輸送を阻害すると、NPAが高濃度の時のみ、部分的に重力応答は阻害された。シュート由来のオーキシンを断つために植物体から切り取った根端に重力刺激を与える実験では、その根端は正常な重力応答を示した。よってシュート由来のオーキシンは重力応答には必要ないことが示唆された。

 そして重力応答に対する求基的オーキシン輸送の影響をさらに解明するために、シロイヌナズナのオーキシン輸送に関係する変異体を用いた実験を行った。シロイヌナズナの変異体eir1の非重力屈性が求基的IAA輸送の変化によるものなのか否かを決定するために[3H]IAA輸送を測定し野生型と比較した。その結果、eir1において求基的IAA輸送は減少を見せたが、求頂的IAA輸送は野生型と同程度だった。

 これらの結果は、求基的IAA輸送がシロイヌナズナの根の重力屈性をコントロールしているという仮説を支持する。

 

興味をもたれた方は、是非ご来聴ください   新谷悠