2008年度 第6回 細胞生物学セミナー
日時:6月17日(火) 17:00~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Ethylene modulates flavonid accumulation and gravitropic
responses in roots of Arabidopsis
Buer,C.S., Sukumar, P.,and Muday,G. K.
(2006)
Plant Physiol. 140: 1384-1396
エチレンはシロイヌナズナの根におけるフラボノイド蓄積や重力屈性応答を調整する
重力屈性とは環境の変化に応答して、植物が活発に生長する能力を最大化する複雑な反応である。これまで根の重力屈性は求基性のオーキシン輸送によって調節されていること、そしてin vivoでの研究によりそのオーキシン輸送をフラボノイドが制御していることが分かっている。また根の重力屈性におけるもう一つの調節因子としてエチレンが知られているが、エチレンの重力屈性に対する影響は詳細には解析されていない。そこで著者らはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の根の重力屈性におけるエチレンの役割を調べた。
Columbiaの野生型(WT)の芽生えをエチレン前駆体であるACCで処理すると、根の伸長や重力屈性による屈曲が減少した。エチレン非感受性ミュータントのein2-5とetr1-3の根はWTの根と同様の重力応答を行ったが、WTで見られるACCによる生長阻害は欠いていた。
また著者らはフラボノイド合成における第1の酵素であるカルコンの合成をコードしている遺伝子が欠損したという変異を持つtt4(2YY6)の芽生えを用いてACCの効果を調べた。フラボノイドを合成できないtt4(2YY6)変異体は、インドール3酢酸の輸送を上昇させ、重力応答の遅延を示した。tt4(2YY6)、その戻し交配系統tt4-2、また他の2つのtt4アリルの根はACCによる伸長阻害に対してWTと同等の感受性を持ったが、一方でこれらのtt4アリルの根の重力屈性による屈曲のACCによる阻害の程度はWTの根と比較して低かった。これはACCがフラボノイド合成を変化させることによって、重力屈性による屈曲を減らしているかもしれないということを示唆している。フラボノイドと結合すると蛍光を発する色素(DPBA蛍光)を用いた染色により、フラボノイドの蓄積を調べたところ、WTではACC処理により根端でフラボノイドの蓄積が見られたが、ein2-5とetr1-3では見られなかった。
またACCは重力に応答しフラボノイド合成が一過的に増大にするのを抑制した。これらの実験はエチレンレベルの上昇がEIN2-とETR1-依存の経路を用いて根の重力屈性を負に調節することと、ACCによる重力応答の阻害はフラボノイド合成を変化させることを通じて生じることを示唆している。
興味をもたれた方は、是非ご来聴下さい。 小林 麻衣