2008年度 前期第7回 細胞生物学セミナー

日時:624日(火)  17:00

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

Tissue and cell-specific localization of rice aquaporins and

their water transport activities

Sakurai, J., Ahamed, A., Murai, M., Maeshima, M., Uemura, M. (2007)

Plant Cell Physiol.49(1): 30-39 (2008)

 

 

イネアクアポリンの組織、細胞特異的な局在性と水輸送活性

 

 世界で栽培されているイネの多くは水田で育てられている。イネはこのように水が豊富な環境においてさえ、水ストレスを受けることがある。日中は日差しが強く、シュートにおける蒸散の需要が強いのに対し、根からの水の供給に限界がある。このことによる需要と供給の間の不均衡が水ストレスの原因であると考えられている。この現象は水輸送の限界のために起こると考えられている。

 植物の水輸送は、アクアポリンと呼ばれる水輸送チャネルの活動や発現に依存している。アクアポリンには、PIPsTIPsNIPsSIPs4つのサブファミリーが存在する。イネは33のアクアポリンで構成されており、RT-PCRの結果ではPIP 12個とTIP 10個の遺伝子が根と葉身でより高く発現することが知られている。しかし、これらのアクアポリンメンバーの細胞特異的な局在性、水輸送はよくわかっていなかった。

 そこで本研究では、7つのアイソフォームに対する抗体を用いた免疫ブロット法と免疫細胞化学によって、イネアクアポリンの組織と細胞特異的な局在性を明らかにし、Stopped-flow 分光測定法と組み合わせてイースト発現システムを行うことによって、典型的なアクアポリンファミリーメンバーの水輸送活性を調べた。

 その結果、OsPIP2;3OsPIP2;5OsTIP2;1が根だけで発現し、OsPIP1メンバー、OsPIP2;1OsTIP1;1OsTIP2;2は葉身と根の両方で発現していることが示された。根端に隣接した領域では莫大な量のアクアポリンが蓄積していた。筆者らは根端からおよそ1.54mmの領域で、様々なアクアポリンメンバーの細胞特異的な局在性を確認した。その結果、OsPIP1メンバーとOsTIP2;2は、それぞれ主に内皮と中心柱に蓄積していた。OsTIP1;1は、根の表皮と外皮において特異的な局在がみられた。OsPIP2;1OsPIP2;3OsPIP2;5、は全て根の細胞に見られたが、他の細胞より内皮において高レベルで蓄積していた。根端から35mmの距離の領域では通気組織が発達しており、アクアポリンの蓄積はほとんどみられなかった。葉身ではOsPIP1メンバーとOsPIP2;1が主に葉肉細胞に局在していた。酵母で発現させたOsPIP2;1OsPIP2;3OsPIP2;5OsTIP2;2には、高い水輸送活性が見られた。

 以上の結果より、様々な水輸送活性を持つイネアクアポリンは異なった組織と細胞において、水輸送を促進し水ポテンシャルを維持するために、それぞれ異なる役割を果たしている可能性が考えられる。

 

興味を持たれた方は、是非ご来聴ください。   梅村 このみ