2008年度      第8回  細胞生物学セミナー

日時:7月1日(火)     17:00

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

Evidence for symplastic involvement in the radial movement of calcium in onion roots

Cholewa,E. and Peterson,C.A.

(2004)

Plant Physiol. 134, 1793–1802,

 

タマネギの根におけるカルシウムの放射方向の移動にはシンプラストが関わっている

 

土壌溶液中から根の中心柱へとCa2+が放射方向に移動する経路については、長い間議論の対象になっており、まだはっきりしていない。Ca+が中心柱に達するためには、表皮,外皮,中心皮層,内皮を通過しなければならない。表皮細胞壁と中心皮層細胞はイオン透過性であり、現在の議論は内皮と外皮におけるイオン通過に関するものである。

Ca+はインタクトの成熟外皮や内皮でも通過するだろうか?もし成熟外皮や内皮を通過するならば、これらの層を通しての移動は、主にアポプラスト、シンプラストのどちらで起こるのだろうか?著者らはこれらの疑問について、タマネギ(Allium cepa)の不定根を使って調べた。

根端に与えられた放射性Ca2+は植物体の根端以外の場所には輸送されず、このイオンが外皮と内皮の未成熟な部位を通ってシュートに供給されることはないことを示唆した。内皮カスパリー線が存在する位置よりも成熟した領域では、処理した根の長さに対し、2.67nmol/mm/dの速さでCa2+が蒸散流に供給されたことから、Ca+はイオンがインタクトの内皮を通過することが示された。根端からより遠くはなれた、内皮と同様に外皮にもカスパリー線が存在する領域では、処理した根の長さに対し、0.87nmol/mm/dの速さで

Ca2+が蒸散流に供給されたことから、Ca+イオンは完全な外皮を通過することが判明した。

またインタクトな根と半分に割いた根に放射性Ca+を取り込ませ、それらから溶出する放射性Ca+を分析する実験を行ったところ、Ca2+は外皮のカスパリー線を拡散では通過せず、さらに、La3+とバナジウム(VO3+)を阻害剤として用いた研究により、内皮におけるCa2+の放射方向の輸送にはシンプラストが大きく関与していることが示唆された。

以上より、タマネギの内皮と外皮を通したCa2+の放射方向の移動は主にシンプラストで起こると結論づけられた。

 

 

 

興味をもたれた方は、是非ご来聴ください。  曽我 祐美