2008年度 後期 第5回 細胞生物学セミナー
日時:11月11日(火) 16:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
The Arabidopsis EIN3 binding F-box protein EBF1 and
EBF2 have distinct but overlapping roles in ethylene signaling
Binder, B. M.,Walker, J. M.,Gagne, J. M.,Emborg, T. J.,G.,Bleecker, A. B.,and Vierstra, R. D.
(2007)
Plant Cell. 19:509-523
シロイヌナズナのEIN3結合F-boxタンパク質EBF1とEBF2は
エチレンシグナル伝達において異なるが、重複した役割を持つ
単純なガス状の炭化水素であるエチレン(C2H4)は、実生の発芽や生長、葉や花弁の脱離、果実の成熟、組織の老化、そしてストレスや病原体への応答を含む植物における種々の生長や発達の過程を制御している。このエチレン応答を媒介するシグナル伝達カスケードは遺伝学的または分子生物学的アプローチによりシロイヌナズナで部分的に明らかにされてきた。このホルモンは5つのエチレン受容体(ETR1,ETR2,EIN4,ERS1,ERS2)により感受されるが、これら受容体はRaf様タンパク質キナーゼCTR1と共に複合体を形成する。エチレン非存在下では、受容体がCTR1を刺激し、シグナル伝達経路においてMAPKカスケードなどの下流で起こる現象を阻害する。エチレン存在下では、エチレンの受容体に対する結合がCTR1の活性を抑制する。いったんCTR1による阻害が解放されると、MAPKカスケードは常時EIN2を活性化させ、引き続いてEIN3の蓄積が誘導される。
そしてこのエチレンシグナル伝達は、様々な反応を誘導するETHYLENE-INSENTIVE 3 (EIN3)/EIN3-LIKE(EIL)転写因子で収束する。最近、EIN3 BINDING F-BOX1(EBF1)とEBF2はEIN3/EIL1のターンオーバーを制御することにより、エチレン感受において機能することが示された。エチレン非存在下では、EIN3とおそらくEILのタンパク質はユビキチン化とそれに引き続く、EBF1とEBF2を含んだCullin1-based E3複合体により分解の標的となる。エチレンはユビキチン化を防ぎ、EIN3/EIL1レベルを上げ、エチレンシグナル伝達を媒介する。EBF1、EBF2、EIN3やEIL1の蓄積に影響を与える変異体の解析を通して、著者らはEIN3とEIL1がEBF1とEBF2の主要な標的となることを示した。エチレンに曝したことによる胚軸生長阻害および、エチレン除去後の生長回復についてのキネティクスの解析により、EBF1とEBF2が時間的には異なるがエチレン感受の調整において重複した役割を持つことが明らかになった。EBF1はエチレン非存在下やシグナル伝達の初期で主要な役割を持つ一方で、EBF2はエチレン応答の後期やエチレン除去による生長の再開より顕著な役割を持つことがわかった。これらのEIN3/EIL1レベルの同調的な制御を通して、EBF1とEBF2はエチレン非存在下でのシグナル伝達の抑制によりエチレン応答を微調整しており、このことにより高いホルモン濃度でのシグナル伝達の勢いが弱められ、エチレンレベルが低下した後のより早い回復が促進されることがわかった。
興味をもたれた方は、是非ご来聴下さい。 小林 麻衣