2008年度   後期5回  細胞生物学セミナー

日時:11 11 ()    1600

場所:総合研究棟6階  クリエーションルーム

Gravity-regulated differential auxin transport from

columella to lateral root cap cells

Ottenschlager, I., Wolff, P., Wolverton, C., Bhalerao, R. P., Sandberg, G., Ishikawa, H.,

Evans, M., and Palme, K.(2003)

Proc. Natl. Acad. Ssci. 100: 2987-2991

 

重力により調節される、コルメラから根の側方根冠細胞への偏差的オーキシン輸送

 

植物の器官が、方向性のある生長を決定しながら行う形態形成において、重力は主要な役割を果たしている。これがつまり重力屈性である。重力によって調節される根の屈曲は、植物ホルモンであるオーキシンの差のある分布によって調節されていると長い間考えられてきた。しかしながら、それらの勾配をつくっている細胞や輸送メカニズムについては特定されないままであった。

そこで著者らは、シロイヌナズナの根の重力屈性において、GFPに基づくオーキシンバイオセンサーにより、細胞レベルの解像度でオーキシンのモニターを行なった。その結果LRC細胞において、重力ベクトルの向きの変化によりDR5-GFPmの非対称な発現が誘導されることが分かった。筆者らは根端で重力を感受するコルメラ細胞において重力刺激後にオーキシンレベルが上昇すること、そしてそこから側方根冠(LRClateral root cap)や伸長域(EZelongation zone)へオーキシンが非対称に流れることを明らかにした。

そしてオーキシンの流入阻害剤と流出阻害剤を用いた実験により、コルメラからLRCへの流出に依存した側方へのオーキシン輸送と、流出および流入に依存したLRCから伸長域への求基的な輸送とを区別し、重力屈性の内在性のオーキシン勾配は、外因性のオーキシン存在下でも発生することを証明した。

 また、重力屈性を示さないAtpin2/eir1-1 変異体を用いて根端におけるオーキシンレベルの測定とオーキシンモニターを行なった結果、根端における求基的オーキシン輸送が損なわれているために、変異体はWTに比べ2.5倍以上多くオーキシンを含んでおり、eir1-1変異は根端におけるオーキシンレベルを実質的に上昇させることがわかった。

 生きた細胞のイメージングは、重力に調節されるオーキシンの流れを細胞レベルの解像度で明らかにし、またそのオーキシンの流れが根の重力屈性に必要であることを強く示唆した。

 

 

興味をもたれた方は、是非ご来聴ください   新谷悠