2008年度   第6回  細胞生物学セミナー

日時:1118日(火)   16:30

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Dynamics of aerenchyma distribution in the cortex of sulfate-deprived

adventitious roots of maize

Bouranis, D. L., Chorianopoulou, S. N., Kollias, C., Maniou, P., Protonotarios, V. E.,

Siyiannis, V. F. and Hawkesford, M. J.

2006

Ann. Bot. 97: 695–704

 

硫酸欠乏下におけるトウモロコシ不定根の皮層における通気組織分布の動態

 

 

 

トウモロコシ(Zea mays)は単一の一次根といくつかの不定種子根からなる胚期の根系と、シュート由来の根で作り上げられている後胚期の根系に分けられる複合根系を形成する。後者は連続した地下節で形成され、冠根や不定根と呼ばれている。シュートの連続した地上節で形成される根は支柱根と呼ばれる。側根は後胚期の根系に属する主要な根の全タイプから出現する。

硫黄(S)は必須多量養分であり、S欠乏は成長を制限し、エネルギー同化作用を阻害する。S欠乏の場合にトウモロコシは、硫酸塩獲得効率を最大にするために根の構造の調節を行う。若いトウモロコシ実生の培地から硫黄源を除去すると、根長の増加、根の質量の増加、「根:シュート」比の増加、側根の増加が見られ、硫酸塩を取り込む能力が全体的に3.8倍に増加したことが報告されている。さらに、S欠乏の場合は硫酸塩取り込みや硫酸塩同化作用経路に関わる遺伝子の発現量も増加することが知られている。多くの種において、根の通気組織はシュートへ及ぶガス伝導組織経路の構成要素である。この経路でのガス輸送は圧力流によって拡散していると考えられる。トウモロコシ不定根においては、通気組織の形成は好気条件下であっても硫酸欠乏により誘導された。S欠乏下において、トウモロコシ不定根では、皮層での細胞死や細胞溶解によって通気組織の形成が始まり、通気組織は中心柱と表皮を連結させている生細胞の放射状ブリッジによって隔てられた形で、放射状に広がっていく。ただ栄養ストレス下の通気組織によるガス輸送増強の重要性、およびS欠乏下での通気組織形成の適応意義は明らかになっていない。

シュート-根連絡部における形態に対するS欠乏の影響を明らかにするために、発達の最初からS欠乏に曝された場合の、輪生する不定根の二番目のwhorlW2)において、根軸に沿った通気組織形成の程度などが調べられた。その結果、通気組織は根長の77%の皮層で見られ、特に側根が出現もしくは発達している領域で見られた。驚いたことに、基部と根端においては通気組織が見られず、またシュートとの間に通気組織の連絡は見られなかった。またS欠乏の結果、基部の通気組織がない領域と比較して、通気組織が発達した領域では活性酸素種(ROS),カルシウムレベル,pHが変化していた。また、木化は厳密に制御されており、正常な発達やストレス応答の際に、異なるレベルにおいてダイナミックに調節を受けることが知られている。また木化の過程は硫黄化合物、すなわちS-アデノシルメチオニンやアセチルCoAを必要とする。S欠乏の結果として、上部の側根が短くなり、次の側根形成部分に向かう木化表皮層の拡大が制限されていた。通気組織の分布は、Wiesnerテストにより検出される木化の程度との関連が見られた。

 

 

 

 

 

興味をもたれた方は、是非ご来聴ください。   曽我 祐美