2010年前期 第1回 細胞生物学セミナー

日時:4月27日(火)17:00~

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

 

Exposure of seeds to static magnetic field enhances germination and early growth characteristics in chickpea (Cicer arietinum L.)

Vashisth, A., Nagarajan, S. (2008)

Bioelectromagnetics 29: 571-578

 

静磁場への曝露はヒヨコマメの発芽と初期成長を促進する

 播種前の種子における、電気やマイクロ波、放射線照射などの化学的、物理的な処理は種子の発芽や初期成長を促進させることが報告されている。磁場曝露による植物の発芽特性についての研究は、現在までに様々な穀物において行われている。しかしながら、これらの増強のメカニズムはまだ解明されていない。

 本研究では、一般的に半乾燥地帯で育てられるヒヨコマメを用いて、発芽特性において最大の増強を示す磁場強度と曝露時間の組み合わせを調べた。乾燥耐性において、ヒヨコマメの根の形態は重要である。乾燥させたヒヨコマメの種子は、磁場の強さ(0250 mT)と曝露時間(14時間)の組み合わせを変えながら、コイルを巻いた円柱状の装置から発生する磁場によって曝露された。こうして異なった磁場強度と曝露時間で曝露されたヒヨコマメの種子は、発芽率や発芽の速度、シュートや根の長さ、芽生えの乾燥重量、算出された生長力および浸出液の電気伝導度を調べるために実験室にて育てられた。

その結果、ほとんどの磁場条件において磁場処理を施していない対照区と比べると著しい発芽特性(発芽率、初期成長等)の促進が見られた。Kavi1977)により、300 mTの磁場に曝露した種子はより多くの水分を吸収することが観察されている。これは本研究での結果の原因の一つである可能性が考えられる。しかしながら、磁場曝露が発芽率や芽生えの成長を減少させた結果が得られるなど、磁場曝露による影響は特定の傾向を持たず、磁場強度や曝露時間によって変化した。様々な磁場強度と曝露時間の組み合わせの中でも特に、50 mT2時間、100 mT1時間、150 mT2時間曝露した種子は、ヒヨコマメの根の特性を有意に高めた。これらの3つの磁場条件における発芽特性をさらに詳しく調べるため、磁場処理を施した種子は土壌において育てられた。その結果、1ヶ月齢のヒヨコマメのシュートの高さや根の長さ、さや数、シュートや根の乾燥重量とその比率(根の乾燥重量/シュートの乾燥重量)、根の表面積、根の容積および根の直径の平均値などが、対照区と比べて増加を示した。 

 磁場処理などの物理的な方法は費用対効果が高く、環境に影響を及ぼすことなく有意に作物の収率を向上させることができるかもしれない。そのため磁場強度と曝露時間が標準化されたならば、種子発芽の特性を高める磁気的な播種前の種子処理は、商業的な応用に導くことが出来るであろう。

 

興味を持たれた方は、是非ご参加下さい。 進藤 裕美