2010年度 前期第5回 細胞生物学セミナー
日時:6月8日(火) 16:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Systems analysis of seed filling in arabidopsis:
using general linear modeling to assess concordance of transcript and protein
expression
Hajduch,
M., Hearne, L. B., Miernyk, J. A., Casteel, J. E., Joshi, T., Agrawal, G. K.,
Song, Z., Zhou, M., Xu, D., and Thelen, J. J. (2010)
Plant Physiol., 152: 2078 – 2087
転写物およびタンパク質発現の一致性を評価するために一般線型モデルを用いたシロイヌナズナの種子充填のシステム解析
種子においては胚が受精卵から急速に発達する。この発達は胚形成、種子充填、成熟の3つの段階に分かれている。種子充填は特に、大量の貯蔵物(油脂、タンパク質、澱粉)の合成と堆積の段階であり興味深い。種子充填期間にタンパク質と転写物レベルが劇的に変化することが知られているが、両者の並行比較による包括的なプロファイリングは行われていない。この包括プロファイリングにより転写後調節を明らかにすることができるが、真核生物においての初期の解析では統計的な相関が見られず、より信頼できる統計アプローチを取り入れることが必要である。
これまでのプロテオームとトランスクリプトームの平行解析においては1つの成長ステージもしくは時点で注目されてきたが、種子の発達の間、連続したイベントが比較的短いタイムスケールで起こるため、時間変化を加えて考慮することが必要である。筆者らは貯蔵高分子の蓄積の期間を含む、シロイヌナズナの種子の連続した5つの発達ステージから、タンパク質と転写物を収集した。タンパク質は二次元電気泳動とタンデム質量分析法を用いて解析し、転写物はオリゴヌクレオチドマイクロアレイ法を用いて解析した。これらの3つの解析によって、5つの発達ステージ(播種後5日、7日、9日、11日、13日)を通した523のタンパク質と22746遺伝子の発現情報が得られ、その後のパターン解析により319のタンパク質/転写物ペアについてパターン解析した。タンパク質/転写物発現パターンを評価するために、一般線形モデル(GLM)を用いた。全体として、この統計評価法の活用によって、やや多数(56%)の発現ペアの集団が示された。この値は他の相関係数の使用の予測よりもかなり高かったが、転写物プロファイリングのみに基づいてタンパク質レベルのプロファイルを推定したり一般化するにはまだ低すぎるといえる。一方で、多くのタンパク質/転写物発現パターンの不一致も検出され、この手法が転写後調節の仕組みの解明のための候補を明らかにすることに役立つことを示唆した。筆者らの分析においてGLMの使用により、結論に信頼性を与え、同時に現象の元となるメカニズムに対する洞察を与える外れ値を特定することができた。
興味を持たれた方は是非ご参加ください。須藤 宇道