2010年度 後期1回 細胞生物学セミナー
日時:10月5(火)17:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Cytoplasmic
clcium Increases in response to changesin the gravity vector in hypocotyls and petioles
of arabidopsis seedlings.
Toyota, M., Furuichi, T., Tatsumi,
H and Sokabe, M,. (2008)
Nagoya University
Plant Physiol.,146:508~514
シロイヌナズナの葉柄や胚軸における重力ベクトル変化応答における細胞質のカルシウム増加
植物は重力ベクトルの変化(重力刺激)を含む実に多様な環境シグナルに対して応答する。シロイヌナズナの実生において重力刺激は細胞質に遊離しているCa2+濃度を増加させることが知られている。しかしながら、器官でのCa2+濃度の上昇や根底にある細胞の分子機構は未解決のままであった。今回の実験ではCa2+感受性発光タンパク質アポエクオリンを強制発現させたシロイヌナズナの実生を用い、Ca2+感受性発光タンパク質と超高感度光子計数カメラの組み合わせによって重力刺激によってCa2+濃度が増加する器官を明らかにし、Ca2+濃度の上昇の生理的・薬理学的性質を明らかにした。実生を180°回転させた時、それらは一過性で二相性のCa2+濃度の上昇を胚軸および葉柄で示した。Ca2+濃度の上昇の二次ピークは角度に依存したが回転速度には依存しなかった。一方で、一次ピークは正反対の性質を示した。これは二次Ca2+濃度上昇が重力ベクトルの変化による特異的なものであることを示している。機械感受性のCa2+透過性チャネル(MSCCs)の阻害剤であると考えられているGd3+やLa3+、Ca2+のキレート剤である1,2-bis(2-aminophenoxy)ethane-N,N,N#,N#-tetraacetic acid
(BAPTA)や内膜のCa2+透過性チャネル阻害剤であるルテニウムレッドは二次Ca2+濃度上昇を抑制した。これは細胞膜内のMSCCsと推定される場所を経由したCa2+の流入が生じていることや、細胞内のCa2+貯蔵部からCa2+が放出されていることを示唆している。さらに二次Ca2+の増加はサイトカラシンB(アクチン重合阻害剤)やラトランクリンB(アクチン脱重合薬)でアクチンを破壊ことによって弱まったが、微少管重合阻害剤であるオリザリンやノコダゾールにより微小管を破壊しても弱まらなかった。このことはアクチン線維がCa2+透過性チャネルの活性化に部分的に関わっていることを暗に示している。これらの結果からMSCCsを経由したCa2+の二次的な増加はシロイヌナズナの実生の葉柄や胚軸における重力応答であることが示唆された。