2011年後期 第10回 細胞生物学セミナー

日時:1227日(火)1700

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Expression of the ethylene biosynthetic machinery in maize

roots is regulated in response to hypoxia

Lee, J. G.,Caldwell, C., Gallie, D. R. (2009)

J. Exp. Bot. 61: 857-871

エチレン生合成機構の発現によるトウモロコシの根における低酸素への応答

 

植物ホルモンであるエチレンは、組織の伸長、果実の熟成、組織の器官脱離、葉や花の老化、穀草類の内胚乳発達における細胞死などの調節を含む植物の成長や発達の多様な局面ではたらいている。また、このエチレンは植物の発達の大部分の局面にとって必要不可欠というわけではないが、不利な生育条件、たとえば低酸素状態や機械的障害、病原体による攻撃などへの応答の調節に関わり植物の発達に寄与している。また、トウモロコシを含む多くの種で、低酸素に対する応答として、皮層細胞の選択的な死が起こる。これにより、酸素供給が制限された状態においても空気の拡散を促進するための破生通気組織が形成される。また通気組織形成を含む低酸素によって起こる皮層の細胞死は、あらゆる種において、エチレンを経由してもたらされ、また、エチレンの増加はACC合成酵素とACCオキシターゼ発現の増加に付随して起こる事が知られている。エチレンの生成過程においてはメチオニンがS-アデニシルメチオニンシンターゼによってS-アデノシルメチオニンに変換され、次いで、これがACCシンターゼ(ACS)によって1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)に変換される。最終的に、エチレンの生成は、ACCオキシダーゼ(ACO)によるACCの酸化によって生成される、ACSACOは共に多重遺伝子ファミリーによってコードされている。トウモロコシにおいては、ACS遺伝子ファミリー(ZmACS)ZmACS2ZmACS6ZmACS73つの要素から成り、ACO遺伝子ファミリー(ZmACO)は、ZmACO15ZmACO20ZmACO31ZmACO314つの要素から成る。

 本報告では、低酸素状態において、トウモロコシの根におけるエチレン生合成機構が空間的、時間的にどの

ように調節されているかを研究した。通気組織の形成とエチレンの産生には酸素が必要とされるため無酸素応答は避け、低酸素応答や通気組織の形成が生じる条件として、根において24時間、4%酸素処理をおこなった。4%酸素への根の暴露は、トウモロコシの根におけるエチレン産生率、ACC含量、ACCシンターゼとACCオキシダーゼの活性を増大させた。また、4%酸素処理をした根においてエチレン生合成機構に関与する遺伝子の発現における変化を調べた。ZmACS6は根冠、根の先端部で発現したのに対し、ZmACS2ZmACS7は伸長域の内皮層で発現した。低酸素に応じたZmACS2ZmACS7の誘導が、とくに根端より遠い皮質領域で観察され、ZmACS6の発現は根端の近くで誘導された。通常の酸素濃度に維持された根におけるZmACO15/31サブファミリーの発現は、根冠と原生師部に関連する判細胞に限定された。低酸素への応答における一過性誘導はZmACO15において大きく、他の3遺伝子群ではより低い程度で起こっていた。ZmACOの低酸素による発現誘導は、皮層細胞における通常の成長条件での発現と比較して変化が見られなかった。ZmACSの発現で観察されたように、ZmACO遺伝子群のメンバーの誘導レベルは24時間の低酸素処理の後ではそれより短い期間での低酸素処理のものと比べてより低いものとなっていた。低酸素下に置かれたトウモロコシの根において、エチレン生合成機構の誘導はエチレン産生の増加と相関していた。このことは、根がエチレン産生を増加させるために、制限された空間でエチレン生合成機構を発現し、それによって引き起こされた低酸素条件に応答していることを示唆するものである。

  

御来聴を歓迎いたします。   坂東理史