2011年度 後期第4回 細胞生物学セミナー

日時:1115日(火) 17:00~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

The role of root apoplastic transport barriers in salt tolerance of rice

(Oryza sativa L.)

Krishnamurthy, P., Ranathunge, K., Franke, R., Prakash, H. S., Schreiber, L.,

and Mathew, M. K. (2009)

Planta, 230: 119-134

イネの耐塩性における根のアポプラスト輸送バリアの役割

 

土壌の塩分は世界的に作物の生産力に影響する主要な環境ストレス要素の一つである。過剰なナトリウムイオンは有毒であり、イオンと浸透圧両方のストレスを与える。イネは一部の変種の栄養生長は、塩ストレスに対する高い耐性を示すが、収量が塩分に敏感な重要作物である。シュートの内部でナトリウムイオンを低く抑えることは生存のために重要であり、一般的に植物は、ナトリウムイオンを細胞内の液胞に隔離することで、細胞質基質においてナトリウムイオン濃度を低く保っていることがこれまでに示されてきた。ほとんどの植物では根の木部へのナトリウムイオンの放射方向の輸送は、木部への積み込みを行う輸送体が関わる細胞間経路によって行われるが、イネではアポプラストを通るバイパス流によるナトリウムイオンの木部への輸送が多く確認されており、その度合いは品種によって異なるがカルシウムイオンによって調節されている。

筆者らは、根におけるアポプラストバリアの形成とシュートへのナトリウムイオンの取り込み、そして植物の生存率との間の関係を、塩耐性をよく示すPokkali, 中程度に耐性をもつJaya, そして塩感受性のIR20の、異なる塩感受性を持つ3つのイネ(Oryza sativa L.)の栽培品種を用いて調べた。水耕法または土壌で1ヶ月間育てたイネ植物を、重度(200 mM)・中程度(50 または 100 mM) 両方の塩分ストレスに曝した。根のアポプラストバリアを蛍光顕微鏡で可視化し、その化学組成をガスクロマトグラフィーと質量分析で定量した。ナトリウムイオンの含有量は炎光光度法で測定した。

Pokkaliの根におけるアポプラストバリアのスベリン化は3つの栽培品種の中で最も広範囲に及んでおり、シュートにおけるナトリウムイオンの蓄積は最も少なかった。食塩水によるストレスは、感受性と耐性両方の栽培品種においてそれらのバリアの強化を誘導し、同時にスベリン合成酵素をコード化するmRNAの増加はストレスを与えてから30分以内に検出可能となった。中程度のストレスを与えてから数日でアポプラストバリアの強化が検出された。総合的に見て、高い塩分に曝露されたとき、根のアポプラストバリアの強化は、ナトリウムイオンの取り込みの減少と生存率の増加に関連している。

 

興味を持たれた方は是非ご参加下さい。 堀田 薫