2011年度　後期第6回　細胞生物学セミナー

日時：12月6日（火）15:30~

場所：総合研究棟6階　クリエーションルーム

Plant cell proliferation and growth are altered

by microgravity conditions in spaceflight

Matía. I., González-Camacho. F., Herranz. R., Kiss. J. Z., Gasset. G., van Loon. J. J.W.A., Marco. R., Medina F. J,. (2010)

J. Plant Physiol., 167: 184–193

植物細胞の増殖と成長は、宇宙飛行における微小重力条件下で変化する

植物は重力を感知しており、重力ベクトルに応答する重力屈性等によって生長と形態形成を行っている。重力の変化が植物の生長に与える影響を調べる実験の多くは根に焦点が当てられてきた。本研究では微小重力が根における細胞の増殖と成長に与える影響に着目した。

2003年10月にスペインの”Cervantes”ソユーズミッションにおいて、シロイヌナズナの種子を国際宇宙ステーションに送り、軌道上で発芽させた。実生を４日間生育した後、船内でパラホルムアルデヒドによって固定した。また、擬似的に微小重力をつくりだす装置であるRandom Positioning Machine (3次元クリノスタット)を用いることによって、この実験を地上において再現した。さらに、1999年にSTS-84のスペースシャトルミッションにおいて、グルタルアルデヒドで固定したこと以外は同様の実験が宇宙で1 Gの遠心機を用いて実施されたが、この時の試料を軌道上対照実験区として用いた。

　これら全てのパターンにおいて1 Gの地上コントロールと比較したところ、微小重力で育った実生は1 Gの地上コントロールより有意に長かったことが分かった。細胞増殖と細胞成長における変化を調べるために、根における皮層の分裂細胞を分析した。

　特定の細胞縦列における1 mm当たりの細胞数をカウントすることによって、増殖速度を定量化したところ、1 Gの地上コントロールより微小重力試料の方がより高い結果が得られた。また細胞成長はリボソーム生合成速度を基準に評価し、リボソーム合成速度は核小体の形態学的、形態計測学的パラメーターや、核小体タンパク質であるヌクレオリンのレベルによって評価することができる。これら全てのパラメーターから1 G試料に比べて微小重力試料におけるリボソーム生合成速度の減少が示された。これらの結果は微小重力条件下での生育が基本的な細胞構造の変化を誘導することを示している。細胞の成長と増殖は正常な条件下では厳密に機能が随伴するが、重力変化後では増殖は促進される一方で、成長は減衰するという相違が見出された。これらの変化の原因は、細胞周期進行を制御するチェックポインのレベルでのG2期の短縮の誘導という細胞周期制御における変化である可能性が示唆された。

興味を持たれた方は、是非ご参加ください。

矢代宇視