2011年前期　第3回生物学セミナー

日時：6月21日　17：00～

場所：総合研究棟6階　クリエーションルーム

A novel protein family mediates Casparian strip formation in the endodermis

Roppolo,D., Rybel,B.D., Tendon,V.D., Pfister,A., Alassimone,J., Vermeer,J.E.M., Yamazaki,M., Stierhof,Y.D., Beeckman,T., Geldner,N.

Nature 473, doi:10.1038/nature10070

新規のタンパク質ファミリーが内皮でのカスパリー線形成を仲介する

1865年Robert Casparyは、根の維管束の周りを囲む新しい細胞を発見し、この細胞は20世紀に入ると植物の内側の皮という意味の内皮という言葉で表記されるようになった。また、この内皮にはカスパリー線の存在が確認された。カスパリー線は植物での細胞膜と細胞外の拡散障壁の役割を担っている。内皮の重要性は分かっているが、内皮の分化を支配する分子について何も分かっていない。近年、内皮でのトランスポーターの極性化した分布が証明された。さらに細胞膜において、カスパリー線の底部をなす中央部のドメイン(カスパリー線膜ドメイン「CSD」)は極性ドメインを分離し、膜タンパク質の側方拡散を防止することが示された。そこで我々は、マイクロアレイ解析の結果から内皮において発現が濃縮された遺伝子を探し、そのなかでその産物が細胞外に分泌される、あるいは細胞膜に局在化すると予測されるものを調べた。

その結果、5つのタンパク質がシロイヌナズナの性質不明のタンパク質ファミリーのUPF0497であると同定された。これらのタンパク質はカスパリー線が形成される膜ドメインを特異的に標識し、CASPs(カスパリー線膜ドメインタンパク質)けた。レポーター株において発現の組織特異性を調べたところ、それらは伸長領域の内皮において特異的な転写が始まっていた。5つのタンパク質の内在性プロモーターや内皮で発現するSCARECROW (SCR)プロモーターに蛍光タンパク質を融着させ観察すると、細胞膜においてその局在性は大いに制限され、CSDの位置と一致していた。分化した内皮細胞では、カスパリー線は細胞壁からなる細胞を超えたネットワークを形成する。CASP1‐GFPのシグナルは3次元レベルで、中心柱を取り囲む円柱のネットワークを形成していた。免疫電子顕微鏡により、カスパリー線形成箇所と正確に一致する、細胞膜におけるCASP1‐GFPシグナルが観察された。CASP1‐GFPシグナルは隣接する細胞の間に並んでいたが、接しておらず、細胞膜でのCASP1シグナルはカスパリー線における細胞膜の癒着域と一致していた。またCASPの局在化はカスパリー線沈着部位を決定することが明らかになった。CASP1‐GFPは、初めのうちは細胞膜上に均一分布を示していたが、その後CSDsの発端部位での蓄積が観察された。そして他の細胞膜領域での局在化は徐々に見られなくなり、CSDs形成のシグナルはより限定された。CASPsは初期はランダムに分布したが、その再配置と将来的なカスパリー線形成部位へのパッチ化が徐々に起こった。このことはCASPs確立したドメインへの配置されるのではなく、その形成に関連していることを示している。CASPsを異所的に発現させた場合、多くは細胞膜に達したが、CSD様構造に蓄積するのもが無く、おそらくは他のCASPsがそれらの局在化に必要であることを示している。

興味をもたれた方は、ぜひご参加ください

荒内　亮輔