2011年度 第5回 細胞生物学セミナー
日時:7月5日(火) 16:30~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Identification of genes expressed in
maize root cortical cells during lysigenous aerenchyma formation using laser microdissection
and microarray analyses
Rajhi, I., Yamauchi, T.,
Takahashi, H., Nishiuchi, S., Shiono,
K., Watanabe, R., Mliki, A., Nagamura,
Y., Tatsumi, N., Nishizawa,
N. and Nakazono, M. (2011)
New Phytol., 190: 351-368
破性通気組織が形成されたトウモロコシの根の皮層細胞で発現している遺伝子の
レーザーマイクロダイセクションとマイクロアレイ解析を用いた同定
シュートから根にかけて形成される通気組織は、酸素などのガスの内部移動を可能にする。植物が湛水条件下で生存するために必要な組織である。通気組織は離生通気組織と破生通気組織の2種類がある。破生通気組織は細胞死が起きて、細胞間隙が生じることにより形成される。多くの湿地性植物種(イネやイグサ)では、通気条件下でも恒常的に破生通気組織が形成されており、土壌の湛水によってさらに強化される。一方で、トウモロコシを含む湿地性植物以外の種では、破生通気組織は好気条件下で形成されないが、湛水、低酸素、機械インピーダンス、栄養欠乏などによって誘導される。このように、トウモロコシの根の通気組織形成は外部刺激によって誘導されることから、トウモロコシはしばしば通気組織形成のメカニズムを調べるために用いられる。
湛水中に植物体に蓄積するエチレンは、トウモロコシとイネにおいて通気組織形成を促進することが分かっている。しかしながら、通気組織形成は主に形態学的、解剖学的、薬理学的に調べられてきた一方で、分子メカニズムは明らかにされていない。破生通気組織形成のメカニズムをより理解するために、破生通気組織形成に伴って誘導される遺伝子を同定し、それらの発現がどのように制御されるかを決定する必要がある。
そこで本研究では、トウモロコシの破生通気組織形成に関連する遺伝子を同定することで、通気組織形成の分子機構を理解する上での礎となる知見を得ることを目的に実験を行った。トウモロコシは好気条件下もしくは湛水条件下で育て、エチレン感受性阻害剤(1-MCP)で処理した。皮層細胞をレーザーマイクロダイセクションで単離し、マイクロアレイ解析によりmRNAの発現レベルを調べた。マイクロアレイ解析の結果、湛水条件下でその発現が上方もしくは下方制御されたもののうち、1-MCP前処理でその発現の誘導もしくは抑制が抑えられた遺伝子が575個みつかった。これらの遺伝子の中には、活性酸素種の産生もしくは除去、Ca2+シグナル伝達、細胞壁のゆるみと分解に関連するものが見られた。
興味を持たれた方は、是非ご参加下さい。 雪吉 健太