2012年後期　第2回生物学セミナー

日時：6月5日　16：00～

場所：総合研究棟6階　クリエーションルーム

TNO1 is involved in salt tolerance and vacuolartrafficking in arabidopsis

Kim,S,J. ,Bassham,D,C.

Plant Physiology. 156. 514–526

シロイヌナズナにおける塩耐性と液胞輸送へのTNO1の関与

植物の液胞は、膨圧の維持・イオン恒常性・有毒物質の区分化・生体防御化合物の蓄積・タンパク質の貯蔵と分解といった重要な機能を担っており、これらの機能を維持するためには液胞タンパク質の正確な輸送が必要であることが報告されている。液胞タンパク質は小胞体で合成され、同時翻訳的に小胞体内腔に輸送される。その後、液胞タンパク質はゴルジ体を介して小胞体からトランスゴルジネットワーク(TGN)に輸送されることが報告されている。TGNにおいて、液胞選択受容体(VSRs)によって液胞選択決定因子の特異的な配列の液胞タンパク質が認識される。受容体が認識した後、液胞タンパク質は液胞前駆体へと輸送され、最終的に液胞に輸送される。受容体はTGNと液胞前駆体に局在することが判明しており、受容体は細胞小器官を循環することが示唆された。しかし液胞前駆体からTGNへの受容体のリサイクルのメカニズムは未だ完全には判明していない。

N・エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(SNAREs)は標的膜と小胞の融合に必要不可欠な膜内在性タンパク質であるSYP41とSYP42は62%のアミノ酸配列相同性を持つ、よく似たSNAREである。先行研究により小胞融合の制御因子である可能性のある、SNAREであるSYP41・SYP61・VTI12とシンタキシンに結合して細胞内小胞輸送に関与するタンパク質AtVPS45 を含んでいる複合体が、シロイヌナズナのTGNで見つかっている。AtVPS45の発現をノックダウンさせるとVSR1が誤った局在を引き起こしていたことから、AtVPS45はVSR1のリサイクルに関与している事が示唆されている。

本研究では、我々は、新しいSYP-41相互作用タンパク質を同定し、それをTNO1(TGN局在型 SYP41相互作用タンパク質)と名付けた。TNO1はTGNでは膜タンパク質であり、SYP41 SNARE複合体と共に機能するという仮説を支持した。tno1ノックアウト型変異体は塩分と浸透圧ストレス感受性の表現型であり、これはおそらくSYP61の誤った局在のためであると思われる。ブレフェルジンA（BFA）処理をおこなったtno1変異体においてはBFAコンパートメントの形成に遅れが見られたが、このことはTNO1は効率の良いTGN/エンドゾーム融合に大切である事を示唆している。そこで我々は、小胞の融合プロセスを促進することによって、TNO1が液胞輸送と塩ストレス耐性に関与していると提唱する。

興味をもたれた方は、ぜひご参加ください

荒内　亮輔