2013年度前期 第3回 細胞生物学セミナー
日時:5月28日(火)17:00~
場所:総合研究棟6階クリエーションルーム
Effect of mechanical
perturbation on the biomechanics, primary growth and secondary tissue
development of inflorescence stems of Arabidopsis thaliana
Paul-Victor, C., Rowe, N. (2011)
Ann. Bot. 107:209-218
シロイヌナズナの花序茎の生態機構,初期成長および
第二次組織発達に対する機械的動揺の影響
植物の茎は自然環境の中で常に機械的動揺による影響を受けており、そのため茎には迅速で適切な対応が不可欠である。この機械的動揺に対する代表的な応答として茎の伸長抑制がある。また、茎の形態の変化を研究することは、機械的動揺が植物組織に直接与える影響や慢性的な動揺環境の中での生存戦略を解釈する上で重要となる。そのため、本研究は機械的動揺がシロイヌナズナ花茎における機械的性質にどのように影響するかを研究することを目的とした。
材料は、シロイヌナズナ (Arabidopsis
thaliana (L.) Heynh. ecotype Columbia-0) を使用し、播種した後、インキュベーター内で育成した。試料の半分は上から吊るされ往復するポリエチレンシートによって、1日に計80回、ロゼット葉がわずかにこすられるように、また花茎の中間点が垂直方向から45-65度傾くように定期的にブラッシング処理を受けた。試料は37日間生育させた後、試料を三点曲げ試験によって強剛性と曲げ剛性を測定した。また、茎切片を作成しトルイジンブルーにより染色した後、画像解析ソフトOptimasを使用していくつかの測定を行った。
動揺処理を行った結果、非処理の試料に比べ、茎の長さは約1/2になり、横断面積も有意に小さかった。しかし、処理側の皮質外層が全体に占める割合は有意に増加しており、より発達していることを示していた。機械的性質の面でみると、処理区の茎の曲げ剛性は約10 Nmm2(非処理区の約1/4)、単位ひずみを生じさせるのに必要な応力の大きさを示す縦弾性係数(ヤング率)は約340 MPa(非処理区の約1/3)と有意に低い値を記録した。さらに、機械的動揺は維管束間組織の密度にも有意な影響を与えており、処理区の茎の維管束間組織の外側から3層までの細胞層では、いずれの細胞層においても広い内腔と薄い細胞壁(非処理区の約1/2)をもつようになることが観察された。
動揺処理により茎は短くなるだけでなく、剛性が低くなるような発達をしており、具体的に組織形態とリグニン化された繊維組織の密度の面からみると、動揺処理を受けた植物は花茎の出現前後で放射方向の一次生長と分化に影響を及ぼしていた。茎の分化におけるこれらの影響は、茎の機械的性質に対して主要な影響をもつことが示唆された。
興味を持たれた方は、是非ご参加ください。 村本 雅樹