2014年度後期 第2回 細胞生物学セミナー(唐原研)

日時:1016日(木)17:00~

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Characterization of transcriptome remodeling during cambium formation identifies

MOL1 and RUL1 as opposing regulators of secondary growth

Agusti, J., Lichtenberger, R., Schwarz, M., Nehlin, L., Greb, T. (2011)

PLoS Genet 7: e1001312.

形成層形成中におけるトランスクリプトームの再構成を特徴づけることにより, 相反する

二次生長の制御因子としてのMOL1 RUL1 が同定された.

 

動物とは異なり、植物は全生活環を通して新たな器官を形成する能力を有している。注目すべきこの能力はシュートと根の頂端分裂組織や側部分裂組織(形成層)によるものである。しかし、頂端分裂組織に比べ、形成層の働きを制御する分子メカニズムに対する知識は非常に限られている。形成層は木部と篩部を産生して植物の放射方向への拡大を引き起こす。二次生長とも呼ばれるこの過程の間、維管束内形成層の分裂組織としての能力が維管束間領域へ伸展し、維管束間形成層の形成を開始する。本研究では、切り出されたシロイヌナズナの茎切片を用いて、二次生長の分子制御を解析するのに適したオーキシン依存の生体外形成層誘導法 (CIS) という方法を確立し、この手法によって同定された、形成層の働きにおいて相反する制御因子である2つの受容体様キナーゼMORE LATERAL GROWTH1 (MOL1)REDUCED IN LATERAL GROWTH1 (RUL1) の働きを明らかにすることを目的とした。

植物試料にはシロイヌナズナArabidopsis thaliana (L.) Heynh. (Col-0 ) を用いた。CISはペトリ皿に1/2強度のMurashige-Skoog培地を作成した後、培地の中間部を6 mmの幅で取り除き半分に分け、いずれかの側に1 mg/mlNAAまたはNPAを加えた。維管束間形成層の発達していない3週齢のシロイヌナズナの茎切片を第一節間から切り出し、半分に分けた培地に先端部と基部のみ接触するよう橋渡しして載せ、2日または5日間培養した。培地に直接接していない中間部の3 mmの領域を観察した。その結果、切片の頂端側からオーキシン処理した場合のみ、維管束間形成層が形成されていた。培養前後およびNAA非処理の切片から横断切片を作成し、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより維管束間領域を採取し、マイクロアレイ解析を行った。

無傷の植物との分子マーカーの比較からCISの実験系では植物体の状況が良く反映されていた。維管束間形成層が形成される条件で組織特異的に発現が誘導される一連の候補遺伝子を特定した。さらに、RNA in situハイブリダイゼーション解析により維管束間形成層の活性制御に関わる候補遺伝子を絞り込み、シグナル伝達に関わるものとして性質不明の受容体様キナーゼMOL1RUL1に着目した。これらが形成層制御に重要な役割を有しているという推測を確かめるため、MOL1RUL1の発現しない系統(T-DNA挿入株)mol1 およびrul1 の形態を詳細に解析した。その結果、mol1 変異体は維管束内、維管束間領域における二次維管束組織の細胞層の厚みが野生型よりも30%増加し、形成層活性の増加を示しており、一方でrul1 変異体では維管束間形成層に基づく組織の形成が40%減少し、形成層活性の減少が示唆された。これらの結果からMOL1 RUL1 の両遺伝子は二次維管束組織の産生を制御しており、MOL1は形成層活性のリプレッサー、RUL1 はアクチベーターとしてそれぞれ働くことが示された。

 

興味を持たれた方は、是非ご参加ください。

村本 雅樹