2014年度後期 第11回 細胞生物学セミナー(唐原研)
日時:12月22日(月)17:00~ 場所:総合研究棟6階クリエーションルーム
Strigolactone
signaling is required for auxin-dependent stimulation of secondary growth in
plants
Agusti,
J., Herold, S., Schwarz, M., Sanchez, P., Ljung, K., Dun, E. A.,
Brewer,
P. B., Beveridge, C. A., Sieberer, T., Sehr, E. M., Greb, T. (2011)
Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 108: 20242-20247
ストリゴラクトンシグナルは植物における二次生長のオーキシンに依存する活性に必要である。
多細胞生物の生活環において、ホルモンによる長距離シグナルは異なる器官・組織の生長と働きを調和させるために必須の存在である。長距離シグナルに関連するホルモンとして最も知られているのがオーキシンであり、数多くの発達過程を制御している。一つは先端部からの求基的なオーキシン輸送によって生じる頂芽優勢であり、腋芽の伸長抑制に必要とされる。また、求基的なオーキシン輸送に依存する過程として二次生長も挙げられる。これらはシュート先端部の切除により阻害され、合成オーキシンの投与により回復する。両過程は上流の過程と制御因子を共有していると考えられるが、オーキシンの求基的な輸送がどのように2つの異なる過程へ変換されるのか、どの程度相互につながっているのか不明である。本研究では植物ホルモンの一種であり、シュートの分枝抑制、形成層活性への正の制御に関連しており、その機能が植物界で広く保たれていることが示されているストリゴラクトン (SL) のシグナルの二次生長制御における役割とオーキシンシグナルとの相互作用を明らかにすることを目的とした。
実験材料には、シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana (L.) Heynh.) を用いた。試料は3週間にわたり短日条件 (8 h 明期、16 h 暗期) で生育後、長日条件 (16 h 明期、8 h 暗期) に移行させメインシュートが一定の長さまで生長したものを解析に使用した。
SLの二次生長への影響を調べるために、SLシグナルの伝達や生合成に関連するMAXタンパク質に注目した。形成層の活性は、ロゼット葉のすぐ上に位置する花茎で形成される維管束間形成層 (IC) から作られる組織の拡大と求頂的なICの進行により定義され、SLのシグナルもしくは生合成の低下したmax変異体ではどちらも有意な低下を示した。また、観察位置よりも上部で、局所的な合成SLであるGR24処理を行ったところ、非処理区では見られなかった維管束領域における細胞分裂が野生型と変異体のどちらでも確認された。さらに、形成層特異的なPXY:CFPと篩部特異的なAPL:CFPのレポーター株をそれぞれ用いて観察したところ、非処理区では一次維管束内においてのみ見られた両マーカーが局所的GR24処理後、維管束間領域においても確認され、GR24に依存するICの誘導と二次維管束組織の形成を示した。このGR24の影響は処理を行った部位に限られ、分枝の伸展を阻害することは無かった。続いて野生型とmax1-1の様々な位置でインドール-3 酢酸 (IAA) の濃度を測定した結果、野生型に比べて、max1-1の茎全体でIAA濃度の上昇が見られ、max1-1においてはDR5rev:GFPレポーター遺伝子の活性増加も確認された。これらの結果からmax変異体において見られる二次生長の減少はオーキシン量の減少によるものではなく、SLシグナルによる独立した形成層活性の制御またはオーキシン蓄積の下流によるものであることが示唆された。オーキシン輸送を阻害するN-1-ナフチルフタラミン酸 (NPA) 処理を局所的に行うと、max変異体では維管束組織の産生が減少し、SLシグナルはオーキシンによる維管束形成層の活性化に重要であることが示された。加えてオーキシンシグナルの欠損したaxr1-3との二重変異体における局所的GR24処理では、野生型とmax変異体ともに単一変異体と同様の応答を示し、SLは二次生長を正に制御するシグナルカスケードにおいてオーキシンの下流として機能していることを示している。これらの結果が別の種においても通用するか否かを調べるため、エンドウ (Pisum sativum L. CV. Térèse) におけるMAX4とオルソログな遺伝子を欠損したrms1-1を用いた形成層活性の定量化、およびユーカリ (Eucalyptus globules Labill.) の茎における局所的GR24処理を行い、シロイヌナズナと同様の結果が示されたことからSLの機能は木本植物を含む種間で保たれていることが示唆された。分枝と二次生長への逆方向の作用は、SLの植物の形態制御におけるSLの中心的な役割を示唆しており、どちらの現象も環境刺激の影響を受けることから、SLの機能は、例えば光を得るためにメインシュートを優先し、二次生長が促進された生育型と花の総産生数を増やすためにサイドシュートを優先した生育型といった植物の2つの生育型を切り替える調節因子であることが示唆された。
興味をもたれた方は是非ご参加ください。 村本雅樹