2014年度前期 第3回 細胞生物学セミナー
日時:5月 27日 (火) 17:00~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Void space inside the developing seed of Brassica napus and the modelling of its function
Verboven, P., Herremans, E., Borisjuk, L., Helfen, L., Tri Ho, Q., Tschiersch, H.,Fuchs, J., Nicolaï1, B., Rolletschek, H. (2013)
New Phytol. 199: 936–947
セイヨウアブラナの発育中種子内部の空所とその機能のモデル化
発育中種子は基本的に好気性呼吸の燃料を外部の酸素に頼っているが、構造的な経路を使い酸素がどのようにして最終的にガス交換を制限している種子の中へ、あるいは種子内部で拡散していくかは現在不明である。
そこで私達はシンクロトロンX線CTをセイヨウアブラナ Brassica napus の発育中種子に適用することで、空所を明らかにし、それらの3次元の構造を解析した。種皮と胚軸を解析する際に用いたX線CTでは子葉の組織を詳しく観察できなかったため、より高解像度なスキャンができるX線CTを用いた。得られた断層の画像は専用のソフトウェアを用いて再構成し、3次元的なモデルを作り解析した。
CTスキャンの結果、種皮と胚軸の両方が空所に恵まれており、種皮内部で直径 数~数10μmで変動するものと胚軸全体で直径5μmまでの、軸方向のチャネルが示された。胚軸では、中心柱は小さく高密度に細胞が充填されており空隙がないが、少し外側に相互接続している長軸方向のチャネルを形成する、周辺の皮層組織が空隙によく寄与していた。しかし種子に直面している子葉組織では、小さな個々の空隙(直径1~5μm)は、葉肉細胞の角に存在していたが、それらが相互に接続している証拠はなかった。
ネットワークの相互接続性に関して、胚軸の中心柱の中央の領域は空隙を欠き、一方皮質は大きくよく接続した空隙を含んでいた。ガスが充填した細胞間の空隙は、水を介するよりも空気を介して酸素が拡散したほうがはるかに早いということからも、組織内部ではガス輸送が主な酸素の輸送手段であることを示している。つまり空所の割合がより高く発育している組織は、そうでないものよりも高い拡散率を持っている。さらに胚軸の空隙率は子葉の約二倍で、軸方向に整列した空隙はよく相互接続していた。その結果、放射方向よりも軸方向のほうが拡散率がはるかに高かった。モデル化はまた、胚軸から液状の胚乳への酸素の放射状の拡散の少数の要素を示した、そこからおそらく酸素の不足した内子葉の最も内側の領域に届くことができる。
本研究では、空所のサイズと相互接続性が、ガス交換のポテンシャルと発育中種子の呼吸活性に局所的に影響する主要な決定因子であることを結論づけた。
興味を持たれた方は是非ご参加ください
丹羽 時生