2014年度前期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:63() 1700~

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Root aeration via aerenchymatous phellem: three-dimensional

micro-imaging and radial O2 profiles in Melilotus siculus

Verboven, P., Pedersen, O., Herremans, E., Ho, Q. T., Nicolai, B. M., Colmer, T. D., Teakle, N. (2012)

New Phytol. 193: 420-431

通気組織に富むコルク組織を通じた根の通気:

シナガワハギ属Melilotus siculusの三次元マイクロイメージングと放射方向における酸素濃度分布

 

湛水耐性を持つ種は、無酸素の土壌において、根の内部の通気により生長が可能になる。双子葉類のいくつかの種においては、通気組織が発達したコルク組織の形をとる二次通気組織が、根における通気のために重要である。しかし、一次通気組織と比較してこの通気組織についてはほとんど分かっていない。特に、通気間隙の構造およびコルク組織とそれに隣接する中心柱組織内の酸素濃度分布は現在まで十分に明らかにされていない。本研究は通気組織に富むコルク組織の三次元微細構造を可視化し、嫌気条件の培地における根への酸素の供給を理解することを目的とした。この目的のためにマイクロCTを用いて、三次元のガス空間構造の画像を得た。酸素の流入や拡散率、コルク組織と中心柱における空隙率を算出した。マルチスケールの三次元の拡散・呼吸モデルを用いて計算された酸素濃度分布と、酸素微小電極を用いて測定された分布を比較した。

実験においては試料としてMelilotus siculusを使い、マイクロCTにおける体積のレンダリングと空隙率の定量的な計算ではAvizo Fire software (Visualization Group Sciences, Merignac, France)を用いて行った。中心柱とコルク組織の空隙率はそれぞれの組織の総容量に対する気体容積の割合として算出した。

コルク組織は0.83 nmol cm-3s-1、中心柱は4.03 nmol cm-3s-1の酸素消費率を示した。空隙率はコルク組織では44~54%、中心柱では2~5%であった。気体の空間のネットワークは中心柱には存在しなかったが、コルク組織には存在していた。また、コルク組織の酸素拡散率は5.0 ×10-6  m2 s-1、中心柱では

8 ×10-11  m2 s-1の値を取った。酸素分圧はコルク組織においては高かった (15 kPa19 kPa)が、中心柱の上部では検出限界を下回った(0.2 kPa以下)

今回作成したモデルでは、マイクロCTと、通気部分に富むコルク組織を伴う根で測定された放射方向における酸素濃度分布の結果を統合・検証することで、根の基部における中心柱の中央部で無酸素条件に近く、頂端に向かうにつれて低酸素状態となることが確認された。通気組織を通した抵抗性の低い酸素拡散経路は根の内部の通気能力を増加させ、植物の湛水耐性を決定する重大な形質となっている。従って、通気部分の多いコルク組織はM.siculusの湿地耐性に寄与に大きく寄与していることが示唆される。

 

興味を持たれた方は是非ご参加ください 

松井 亮