2014年度前期 第7回 細胞生物学セミナー

日時:624日(火)  17:00~

場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Dirigent domain-containing protein is part of the machinery required for formation of

the lignin-based Casparian strip in the root

Hosmani, S. P., Kamiya, T., Danku, J., Naseer, S., Geldner, N., Guerinot, L. M., Salt, E. D.2013

Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 110, 14498-14503

Dirigentドメインを含むタンパク質は根におけるリグニンに基づいたカスパリー線の形成に

必要な仕組みの一部である。

 

植物の根において、内皮は水や溶質の維管束系への選択的な輸送のために重要な調節機能を持つ。このような調節を可能とするカスパリー線は、近接した内皮細胞の細胞壁間を密接に結合することで形成される。先行研究により、この結合はNADPH酸化酵素と過酸化酵素(ペルオキシターゼ)による触媒反応が関わった、モノリグノールの酸化的カップリングによって重合したリグニン沈着によって形成される。カスパリー線領域で機能するカスパリー線ドメインタンパク質(CASPs)はカスパリー線の形成位置の細胞膜において形成されたスカフォードタンパク質による一連の生合成機構により正確に場所が決まる。しかしながら、カスパリー線を形成するために隣接した内皮細胞間の細胞壁を架橋するリグニン沈着の制御に関わるタンパク質は未だ不明であり、本研究では正確なリグニン沈着局在の機構に関わるタンパク質を明らかにすることを目的とした。

実験ではシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana ( L. ) Heynh)の野生型Col-0、スベリンを増強するDirigentドメインを含むタンパク質ESB1の変異体であるesb1-1変異体とCASPsの変異体であるcasp1-1 casp3-1ニ重変異体の7日齢または14日齢の個体の根を使用した。赤色蛍光タンパク質mCherryESB1との融合タンパク質およびリグニンの自己蛍光を用いた共焦点顕微鏡観察より、Col-0ではESB1が初期は内皮細胞の赤道面に沿ってパッチ状に局在した後、つながることが判明した。しかも、esb1-1ではCASP1-GFPの局在がパッチ状になった。これはCASPsのカスパリー線形成領域での正確な局在にはESB1が必要であることを示唆している。また、ヨウ化プロピジウム(PI)染色によるアポプラスト経路に対するバリア機能の観察ではCol-0と比較してesb1-1casp1-1 casp3-1とともにPI浸透を指標とするバリア機能の形成は遅延されるものの、完全には阻害されていないことが明らかとなった。次にESB1に対する免疫金粒子標識および透過型電子顕微鏡(TEM)観察においてもESB1はカスパリー線に局在しており、両変異体ともにCol-0とは異なる局在を示し、esb1-1においてはCol-0と比較してカスパリー線構造の消失が認められた。加えて、casp1-1 casp3-1においてはカスパリー線領域でのESB1の減少がみられた。さらにラマンスペクトルを用いた分析により、esb1-1の異常なカスパリー線において沈着が増加した物質は、Col-0のカスパリー線および木部リグニンに類似したリグニン様物質であることが判明した。また、リグニンと並ぶ重要な疎水性物質であるスベリンの局在を観察するためにフルオロイエロー染色を行った。観察の結果、両変異体のスベリン沈着はCol-0よりも根端に近い側からおこっていた。両変異体におけるこの異所的なスベリン沈着はカスパリー線形成異常によるものであると考えられ、ESB1がスベリン沈着と協調してカスパリー線形成に関わることが示唆された。

ESB1CASPs依存的にカスパリー線に局在し、ESB1の非存在下ではカスパリー線の形成異常によりスベリンの異所的な沈着がおこった。これらのことからESB1が正確なカスパリー線形成に必要な役割をもつこと、ESB1はスベリンの沈着に影響を与え、カスパリー線形成においてESB1CASPsの両方が相互的に必要であることが示唆された。

 

興味をもたれた方は是非ご参加ください。     松本