2015年度 第8回 細胞生物学セミナー(唐原研究室)

1215日(火)17:00- 総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Cellular and molecular aspects of quinoa leaf senescence

López-Fernández, M., P., Burrieza, H., P., Rizzo, A, J., Martínez-Tosar, L., J., Maldonado, S.2015

Plant Sci. 238: 178-187

 

キノアの葉の老化における細胞及び分子レベルでの側面

 

 葉の老化は細胞、組織、器官、そして個体レベルでの協調した作用を伴い、他の内在性もしくは環境要因の影響下で齢にコントロールされる。この協調した作用のメカニズムは、老化に影響する様々なシグナルを含む統合したものであり、作物の収量増加や果実の成熟、バイオマスの生産等に応用するために研究する必要がある。本研究では、発達もしくは老化の過程にある葉の組織において、(ウ)核や液胞、葉緑体の形態変化(エ)RuBisCOの分解(オ)クロロフィル含有量の変化(カ)DNAの分解(キ)ヌクレアーゼ特性の変化(ク)倍数性の増加について調べた。

 キノア(Chenopodium quinoa Willd.)の葉を生長段階(ステージ1-2)、最も成熟した段階(ステージ3)、老化段階(ステージ4-5)に分けた。クロロフィル含有量は葉が発達している間に劇的に増加し、ステージ2でピークを迎え、ステージ3では有意に減少した。下方の葉ほど黄化し、老化の開始と進行は劇的なクロロフィル含有量の減少によって特徴づけられた。ステージ3では、葉肉の厚さが最大になっており、核では大きい核小体と濃縮されていない、もしくは消失したクロマチンが見られた。老化初期において核では無傷の核膜と核小体が見られたが、老化後期では核小体が消失し染色質は核質内で凝縮した塊となった。葉緑体は最初にダメージが見られる小器官である。ステージ3では葉緑体においてストロマのデンプン粒が減少した。しかし、葉緑体の減少はステージ4にも見られ、ステージ5では葉緑体が完全に分解されていた。また、葉緑体におけるデンプン合成は老化初期から停止し、グラナの構造が消失し、チラコイドが徐々に膨張し、分解された。プラストグロビュールの数と大きさは増加し、DNAを含む領域は拡大した。RuBisCO蓄積についてウエスタンブロットと免疫染色によって調べたところ、RuBisCOの蓄積はステージ3で上昇し、ステージ4で減少し、ステージ5では見られなくなった。核内倍加は成熟段階の後に起こって老化の間続き、この間にクロマチンは凝縮した状態になった。ステージ2の前では核のDNA量は2C4Cであった。2CDNA量がゲノム二倍体の状態にあることを示し、4Cは細胞が細胞周期のM期に入ったことを示す。発達段階(ステージ23)では、4C核が減少し、消失する一方で2C核が増加した。これは細胞分裂がステージ2後期とステージ3で止まったためであった。老化の間(ステージ45)、DNA量は2または4Cであった。これらの老化期間では、4Cは核内倍数性を示した。老化がさらに進むに連れて、4C核が徐々に増加する一方で2C核が減少した。

興味をもたれた方は是非ご参加ください。        高橋郁佳