2015年度前期　第6回　細胞生物学セミナー（唐原研究室）

6月30日（火）17:30～　総合研究棟6階　クリエーションルーム

Loose Plant Architecture1, an INDETERMINATE DOMAIN Protein involved in

　shoot gravitropism, regulates plant architecture in rice

Wu, X., Tang, D., Li, M., Wang, K., Cheng, Z. (2013)

Plant Physiol. 161: 317-329.

Loose Plant Architecture1遺伝子は、シュートの重力屈性に関わる

INDETERMINATE DOMAINタンパク質をコードし、イネの植物構造を調節する

　主稈に対する分げつの角度と稈に対する葉身の角度はイネ (Oryza sativa L.）の株の形態を制御する2つの重要な要因である。分げつ角度が大きく葉の葉身が小さいと光合成効率が上がるが栽培密度を高くできない、他方、分げつの角度が小さいと病気に罹りやすくなる。そのため、これらの角度は穀物の収穫量に重要である。これらの変異体の研究により、分げつ角度にはオーキシン輸送が、葉身角度にはプラシノステロイドやジベレリンが関わっていることが示されている。本研究では、既知の変異体とは異なる、ssp. indicaの変種Zhongxian3037から自然発生したlpa1の変異体の原因遺伝子Loose Plant Architecture1 (LPA1) のクローニングと特徴付けを行った。

　イネの植物体は、自然条件下において、水田で生育した。芽生えの明所または暗所処理のためには、発芽した種子を水の上に浮かべた96個の穴が開いているプレートの中に入れ、14時間の明期、10時間の暗期の条件または明期のみの条件でグロースチャンバー（28℃）に移動し、7日後にサンプリングした。栄養期と生殖生長期の間、lpa1の分げつと葉の角度は野生型よりも大きい角度を示した。葉身基部の観察により、lpa1では、葉身関節（葉身基部）の向軸側が大きく生長していた。さらに葉身関節を細胞レベルで観察すると、lpa1の方が細胞が大きく伸長していた。lpa1の重力屈性を調べたところ、シュートの重力屈性反応が低下していた。次に、若いシュートを上下さかさまに回転する重力刺激を与えると、幼葉鞘柔細胞においてアミロプラストが重力方向に沈殿するのに野生型では10分かからなかったが、lpa1では20分かかった。この結果、LPA1はイネの子葉鞘において重力感知するアミロプラストの沈殿速度を制御することで重力感知に影響を及ぼしていることが示唆された。マップベースクローニングを行い原因遺伝子LPA1を同定し、その発現パターンを解析するためリアルタイムPCR法を行った。その結果、LPA1の発現は、葉片の結合部や節間部のような特に若い組織において高かた。イネ科草本において葉鞘の葉枕は重力応答のために特化した器官であることが知られる葉鞘関節（葉鞘の葉枕）において、LPA1は非常に発現を示し、LPA1は葉鞘関節の重力屈性に関わることも示唆された。タンパク質配列の解析により、LPA1はOsIDD14として知られている植物特異的なIDDタンパク質ファミリーに属し、典型的なCys-2/His-2亜鉛フィンガータンパク質であることが示された。次に、高等植物でBLASTPを用い、LPA1と相同性なアミノ酸配列をもつタンパク質を検索した。その結果、高等植物にはLPA1と高い配列類似性を示すタンパク質が27あり、これらのタンパク質は特徴的なモチーフEL1（ELQLLP）とEL2（LQLSIG）を共有することが分かった。それらは転写抑制活性を示すEARのようなモチーフと似ていた。この結果、LPA1は独特なドメインとモチーフを持つIDDタンパク質の新規のサブファミリーであることが明らかとなった。一過的発現によりLPA1-GFP融合タンパク質の細胞内局在を調べたところ、このタンパク質は核に局在した。また、シロイヌナズナのプロトプラストを用いたデュアル・ルシフェラーゼ・レポーターアッセイにより、転写調節活性を調べたところ、EL1モチーフを持つペプチドが強い転写抑制活性を示した。以上より、LPA1は活性のある転写抑制因子であり、その主な抑制効果はEAR様モチーフに起因していること、そして、アミロプラストの沈殿を制御することで重力屈性を制御することが示唆された。

興味を持たれた方は是非ご参加ください。　　山田茉由