2017年度後期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:1114日(火)16:00〜 場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Temperature as a determinant factor for increased and reproducible in vitro pollen germination in Arabidopsis thaliana

Boavida, L. C. and McCormick, S. (2007)

Plant J. 52: 570-582.

シロイヌナズナの花粉をin vitroで再現性よく発芽させるために重要なのは温度である

 

雄性配偶体である花粉粒は、大きな栄養細胞と、その中にある二つの精細胞から構成される。ほとんどの種の花粉は、葯の裂開時には極めて乾燥しており、雌蕊の柱頭表面に付着した後に吸水する。その後、細胞膜が再構成され、代謝が活性化され、花粉管が形成される。花粉管が、雌蕊の誘導(伝達)組織を通って伸長し、二つの精細胞を胚嚢へ輸送し、放出することで重複受精が起こる。花粉の発芽および花粉管伸長の分子生物学的・生化学的・生理学的解析は、植物生殖における基礎研究の重要課題である。また花粉は、極性および先端成長を研究するための最良のモデル系である。花粉管の伸長中に、細胞骨格の再編成、エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、極性を持つイオンの勾配と流れの維持、および周期的な再配向が起こる。これらの過程は、主にユリやタバコなどの二細胞性花粉を持つ種で研究されている。これらの種では、ホウ酸、ショ糖、カルシウム、およびいくつかの塩を含む単純な培地で花粉を容易に発芽させることができるためである。シロイヌナズナでは信頼できる花粉発芽のプロトコルがなく、再現性が低い。そこで,花粉発芽の再現性に影響する外部要因を明らかにするために、厳密に制御されたインキュベーション条件下で最適化された人工培地を使用し,プロトコルを確立することを目的とした。

 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のColumbiaLandsberg erecta (Ler)の株を使用した。まず始めに発芽培地を最適化するため、先行研究で用いられた初期の条件(H3BO3,1mM CaCl2,1mM KCl, 5%スクロース, pH 7.5, 1%低融点アガロース)から一度に1つずつ要因を変化させ、花粉発芽率と花粉管成長を調べ,全ての成分を精密に再調整した。また、追加成分も検討した。これによって、発芽率が80%に達する最適な固体培地(0.01H3BO3, 5 mM CaCl2, 5 mM KCl, 1 mM MgSO4, 10%スクロース, pH7.5, 1.5%低融点アガロース)を作成したが、依然再現性の問題があり、発芽率が5~10%になる日もあった。したがって外部要因をテストした。花粉は、固体の最適培地上において、18℃〜32℃の範囲で、2℃間隔でインキュベートした。 ColumbiaLerの花粉発芽率が80%である22℃が最適温度であり,それ以外では、花粉の発芽率は50%以下に低下した。温度は、花粉管の長さにも影響した。最適条件下で、花粉管は、16時間のインキュベーション後に1 mmを超える長さに達し、先行研究(広く使用されてきた培地での平均長は200~400 µm)よりも著しく長かった。また、緩衝液および非緩衝液によるpHの変化を試験した結果、緩衝液を添加することでColumbiaおよびLerの両方において発芽率が低下することを見出し、非緩衝培地におけるpH 7.5~8.0の値で最大の発芽率が得られた。これまでの実験では、開花0日目の花を使用したが、齢別の花における発芽率の試験も行った。その結果、Columbiaでは毎日約10%の発芽率の低下が確認され、Lerでは急速に低下し、0日目の発芽率が80%であったのに対し、1日目で50%に低下した。花粉発芽率は、花粉密度によっても影響された。花粉密度が増加するにつれて発芽率が改善され、固体培地の場合、300を超える花粉粒が2 mm2の領域に広がったとき、最高の発芽率(90%)を確認した。また、22℃でのインキュベーション前に、花を湿室中に入れることによる予備吸水を,室温(22~24℃)で30分行った後に,さらに30℃で30分を行うことによって、花粉の破裂による生存率の低下を防ぐことができた。以上により、in vitroでのシロイヌナズナ花粉の発芽および発芽管伸長の方法の信頼性および再現性が大幅に改善された。

興味を持たれた方は是非ご参加ください。    澤田稜太