2018年度前期 第1回 細胞生物学セミナー

日時 : 410()1700〜 場所 : 総合研究棟6階クリエーションルーム

Effect of Hypergravity and Phytohormones on Isoflavonoid Accumulation in Soybean (Glycine max.L.) Callus

Downey, P. J., Levine, L. H., Musgrave, M. E., McKeon-Bennett, M., & Moane, S. (2012)

Microgravity Sci. Technol. doi: 10.1007/s12217-012-9322-9

ダイズカルスにおけるイソフラボン蓄積に及ぼす過重力と植物ホルモンの影響

 

 植物の二次代謝産物は構造的に多様であり、ヒトの健康に有益なものもある。イソフラボンはマメ科に属する植物種によって合成される天然の二次代謝産物である。先行研究では、黄化したダイズの実生を6 日間宇宙の微小重力下で育てると、胚軸および根組織におけるイソフラボン配糖体の上昇をもたらすことが報告されている。本研究ではダイズカルスにおけるイソフラボン蓄積に過重力および植物ホルモンが及ぼす影響を調べた。

Glycine max (L.) Merr. ‘Acme’の種子を用い、家庭用漂白剤と界面活性剤を含む溶液で表面殺菌した。種子を25℃の暗所において、0.6%寒天上で48 時間おいて発芽させ、無菌条件下で切開し、切断子葉にカルス形成を誘導した。カルス培養培地としては、 30 mg/Lスクロース、8 g/L寒天、4.3 g/Lムラシゲスクーグ培地を含むpH5.7の培地を基本とし、これに6-benzylaminopurine (BAP) とナフタレン酢酸 (NAA) の比が異なる4つの組み合わせ(BAP:NAA (mg/L). CM1 = 0:1CM2 = 0.25:1CM3 = 0:5CM4 = 0.25:5)の濃度で加えた。遠心機を用いた4 Gおよび8 Gの過重力で22℃の暗所で16 日間培養した。フラボノイド抽出のため、カルス組織を液体窒素中で急速凍結し、15 mlの遠心チューブに移し、95%エタノール中に分散させ、遠心分離後、上清を4℃で保存した。2.5 mlの抽出物を真空下40℃で濃縮乾固させ、75%エタノール中に溶かした。濃縮抽出物を0.45 µmのシリンジフィルターを通してろ過し、逆相カラムにかけ酸性脱イオン水中の0~55%アセトニトリルの直線勾配で溶出した。6つのイソフラボノイド (daidzeingenisteindaidzin6′′ -O-malonyl-7-O- glucosyl daidzein genistin6′′-O-malonyl-7-O-glucosyl genistein) について、フォトダイオードアレイを用いてdaidzein genistein 252 nmで、それらの配糖体を260 nmで検出した。

カルスの生重量については、植物ホルモンによる影響は見られ、BAPの添加はカルスの生重量を増加させ、NAA濃度の増加はカルスの生重量を増加させなかった。しかしどのホルモン条件下でも異なる重力による有意な差は見られなかった。一方で、総イソフラボノイド含量は、CM2の培地を除き、重力の増加に伴い有意に低下した。NAAの増加による総イソフラボノイド含量の増加はBAPや重力によって変化する傾向が見られた。カルス組織内のイソフラボノイド組成については、総含量のうち75-91%を占める主要な成分である、6′′ -O-malonyl-7- O-glucosyl daidzein6′′ -O-malonyl-7-O- glucosyl genisteinの比を比べたが、重力あるいはホルモン条件の違いは有意な影響を及ぼさなかった。

 

 

興味を持たれた方は是非ご参加ください。 谷畑 昂士郎