2019年度前期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:64日(火)16:00~ 場所:総合研究棟6階クリエーションルーム

Auxin influx carriers control vascular patterning and xylem differentiation in Arabidopsis thaliana

Fàbregas, N., Formosa Jordan, P., Confraria,A., Siligato R., Alonso ,J. M., Swarup, R., Bennett, M. J., Mähönen, A. P., Delgado, A. I, and Ibañes, M. (2015)

PLoS Genet. 11: e1005183

オーキシン流入担体はシロイヌナズナの維管束のパターン化と木部分化を制御する

シロイヌナズナの花序柄では、維管束は規則的な放射状パターンで整列する。このパターンは維管束が出現する領域の細胞にオーキシンが規則的にスポット状に集積することにより形成されることが知られている。オーキシンは受動輸送または流入担体による能動輸送を介して細胞内へ流入し、流出担体によって能動的に細胞外へ流出する。流出担体はオーキシンを極性輸送し特定の細胞へのオーキシン集積を促進することが明らかになっている。流入担体はAUX1AUX1様タンパク質LAX1, LAX2, LAX3が知られており、それらは根の原生師部以外のほとんどの細胞で細胞膜に均一に分布し、細胞外部から内部へ非極性の様式でオーキシンを能動輸送する。シュートでの維管束パターン形成における流入担体AUX1/LAXの役割は、流出担体とは異なり未知である。本研究では、シミュレーションによる理論的手法と変異体を用いた実験的手法を組み合わせて、維管束形成と木部分化における流入担体AUX1/LAXの役割を明らかにした。数理モデルを用いたオーキシン輸送のシミュレーションでは、リング状に並んだ細胞でのオーキシン拡散を想定した従来のモデルに、アポプラストでの拡散とオーキシンにより誘導される輸送担体の合成を新たに考慮したモデルを提唱し、数値積分によるオーキシン動態のシミュレーションと線形安定性解析によるオーキシン集積の出現条件の予測を行なった。その結果、流入担体による能動輸送の強さに応じてオーキシン集積の数が変化することが示された。モデルでは受動輸送のみでも十分にパターンを形成できることが示されたが、特にアポプラストオーキシンの拡散係数が高い条件では、流入担体がパターン形成の維持に必須であることが示された。逆に、流出担体はパターン形成に必要ではあるがオーキシン集積の数にはほとんど影響しないことが明らかになった。この結果はこれまで流出担体変異体で報告されていた維管束パターン形成が抑制された表現型は、パターン形成の障害ではなくオーキシン輸送が大幅に減速したことによって生じたことを示唆している。これらのモデルによる予測は流入担体AUX1/LAXを欠損した変異体を用いた実験で実際に確かめられた。短日条件下では多重変異体aux1lax1lax2lax3及びaux1lax1lax2で維管束数及び総細胞数がWTと比較して有意に減少し維管束間繊維の領域が増加する傾向があることが確認され、モデルでの予測と合致する結果が得られた。一方で、長日条件下では維管束数の明瞭な変化は見られなかった。以上の結果から流入担体AUX1/LAXは、維管束パターン形成を促進する役割をもつことが明らかになり、その機能は日長により制御される可能性が示唆された。さらに、短日条件下のaux1lax1lax2lax3aux1lax1lax2では維管束間繊維と木部細胞の両方で明確な分化の抑制がみられ、長日条件下でも短日条件より緩やかではあるものの木部分化の阻害が見られた。この阻害は維管束パターン形成が起こらない主根でも観察されたことから、二つの機能は独立していることが示された。aux1lax1lax2の維管束でオーキシンシグナリングレポータータンパク質DR5:GFPの蛍光が減少していたことから、変異体では流入担体の欠損により細胞内のオーキシン濃度が低下し、木部分化を制御するオーキシンシグナリングが阻害されたと考えられる。加えて、モデルにより流入担体のアポプラストのオーキシン濃度を低下させる機能が示された。アポプラストのオーキシン濃度変化はパターン形成に影響しないため、流入担体及び流出担体のパターン形成とは独立した調節機構として、アポプラストのオーキシンが木部分化の阻害剤としてはたらくことが予測された。これらの結果から、流入担体における木部分化の機能について細胞内外のオーキシンにより木部分化が調節されるモデルを提唱した。近年アポプラストのオーキシンが細胞表面の受容体に感受され下流のオーキシンシグナリングを促進するという報告や、アポプラストと細胞質のオーキシンシグナリングの潜在的な繋がりも示されており、今後木部分化を調節する分子的なメカニズムの解明に寄与することが期待できる。

                                                                                                                                                                                                                                    山浦遼平