2021年度前期 第12回 細胞生物学セミナー

日時:76日㈫ 1630〜 場所:ZOOM開催

Ethylene-mediated apoplastic barriers development involved in cadmium accumulation in root of hyperaccumulator Sedum alfredii

Liu, Y., Tao, Q., Li, J., Guo, X., Luo, J., Jupa, R. , Liang, Y., Li, T.

J. Hazard. Mater. 403: 123729 (2021).

貴金属集積植物であるシナマンネングサの根におけるカドミウムの蓄積に関与する、エチレンに媒介されるアポプラストバリアの発達

カドミウム(Cd)産生は、主に人間活動に由来し、ほとんどの植物の成長と発達に毒性がある。過去数十年の間に、Cdの取り込み、輸送、蓄積に関連する生理学的および分子的プロセスの調査に多大な努力が払われてきたが、Cdの過剰蓄積のメカニズムは、植物ではまだ十分にわかっていない。エチレンは重要なガス状植物ホルモンであり、植物の成長と発達に重要であるだけでなく、広範囲の環境ストレスへの応答の重要な調節因子でもある。シナマンネングサは、さまざまな植物種におけるCdの過剰蓄積の生物学的役割の解明に役立つ、Zn(亜鉛)/ Cdの共蓄積物質である。本研究では、アポプラストバリアの発達に対するエチレンの役割とシナマンネングサのCd取り込みへの影響を調査した。

浙江省衢州の鉛/亜鉛鉱山で採取された貴金属集積生態型(HE)と非集積型(NHE)を用いた、根のエチレン生成の測定を行うため、根の部分を根の先端から2cmの位置で切り取り、すぐに軽い0.7%寒天培地を含む2mlのペニシリンバイアルに入れ、暗所で、25℃3時間インキュベートした。その後、1 mlのガスサンプルを抽出し、すぐにGS-GasProカラムと水素炎イオン化型検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフに注入した。インジェクタポート、カラム、およびFIDの温度は、それぞれ8050、および250℃に設定された。また、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)酵素活性の測定を行うために様々な処理の後、根を収穫し、すぐに液体窒素で凍結した。根端における実際のCd流入測定は正味のCd流入は、3.2mmの位置までの様々な距離で行われた。

Cdの有無に関わらず、HENHEよりもACC合成酵素遺伝子ACS2の発現や内生エチレン生成が高く、根の先端からカスパリー先端部までの距離は長く、根長に対する内皮スベリンラメラ形成領域の割合は短く、PAL活性はHEではNHEよりも低かった。しかし、Cd処理(25µM)の場合、根の先端からカスパリー線先端部までの距離はHEではあまりへんかしなかったがNHEでは低下し、カスパリー線に関わると考えられる遺伝子SaCASP、スベリン化に関わると考えられる遺伝子SaGPAT5SaKCS2SaCYP86A1の発現はいずれもHEではあまり変化しなかったがNHEでは増加した。根の先端からカスパリー線先端部までの距離については、Cd処理の場合には、両生態系においてのエチレン前駆体ACCの処理(1µM)で増加し、エチレン合成阻害剤AVGの処理(1µM)で減少した。アポプラストトレーサーであるtrisodium-8-hydroxy-1,3,6-pyrenetrisulphonic acidPTS)および正味のCd流入は、Cd非処理では調べられていないが、Cd処理で比べるといずれもHEではNHEよりも根に多く流入しており両生体型においていずれの流入もACC処理で増加し、AVG処理で減少した。

以上より、HEにおいては内生エチレンのレベルが高いことでアポプラストバリアの形成が遅れ、アポプラストにおけるCdの貯蓄が促進していることが示唆された。

興味を持たれた方はご参加ください(zoomURLをお知らせします) 甲藤楓