2021年度前期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:518()  1600〜  場所:Zoom

Katanin Effects on Dynamics of Cortical Microtubules and Mitotic Arrays in Arabidopsis thaliana Revealed by Advanced Live-Cell Imaging

Komis, G., Luptovčiak, I., Ovečka, M., Samakovli, D., Šamajová, O., Šamaj, J. (2017)

Front. Plant Sci. 8 :886

 

シロイヌナズナにおけるカタニンの表層微小管動態および有糸分裂の配列に対する影響を

先進的なlive-cell imagingで明らかにした.

 

カタニンはこれまで植物で確認されている唯一の微小管を切断するタンパク質である.KATANIN 1γ-チューブリンとオーグミンを介した核形成によって,既存の微小管に核形成した新規微小管を切断し,微小管が交差する部分にもリクルートされ,微小管を切断する.間期から有糸分裂への移行におけるKATANIN 1の役割については,KATANIN 1の変異体であるfar2lue1ktn1-2の化学固定した根の細胞において,免疫局在性手法を用いて有糸分裂期の微小管の組織化について取り組んだ3つの先行研究があるのみで,分裂準備帯(PPB)の形成や紡錘体の動態,遠心的に拡大するフラグモプラストにおける役割はほとんど解明されていない.筆者らは,シロイヌナズナのKATANIN 1のノックアウト変異体であるktn1-2における微小管の組織化および動態に着目し,構造化照明顕微鏡(SIM),スピニングディスク,エアリスキャン共焦点レーザー顕微鏡などの高解像度かつ高速の先端顕微鏡を用いて,細胞周期における微小管ダイナミクスに対するKATANIN 1の新たな機能を明らかにした.

まず,葉柄の表皮細胞の細胞伸長と微小管配向を観察した.ktn1-2変異体では,表層微小管の横方向への配向が阻害され,ランダムな配向が占めるようになった結果,等方性の細胞の伸長が促進された.また,ktn1-2変異体の子葉の表皮細胞では,表層微小管が野生型と同様のランダムな配向を示したが,野生型と比較してktn1-2変異体では複数の微小管の枝分かれが観察された.加えて,ktn1-2変異体では,微小管の伸長速度が著しく低下した.さらにktn1-2変異体ではカタストロフおよびレスキューの頻度が有意に低く,微小管交差部においてもktn1-2変異体では微小管の切断が観察されなかった.KATANIN 1の欠乏はPPBの形成とダイナミクスにも大きな変化をもたらした.ktn1-2変異体では,幅広いPPBや片側のみで構成される不完全なPPBも見られた.また,PPBの成熟過程を解析したところ,野生型に比べて非常にゆっくりとしたペースで狭くなり,野生型よりPPBが広くなっていた.

また,分裂期の紡錘体とフラグモプラストの形成はktn1-2における影響を受けないが,両過程のダイナミクスは野生型と比較して大きな違いが見られ,変異体では有糸分裂と細胞質分裂の両方が著しく遅れた.さらに,紡錘体とフラグモプラストはPPBによって決められた分裂面から逸脱した紡錘体の赤道面において,広範な回転運動を示した.しかし,フラグモプラストの形成開始時には,回転運動を経て,細胞板の拡大が元の細胞分裂面に一致するように修正された.

以上のことから筆者らは,KATANIN 1が有糸分裂と細胞質分裂において微小管構築の制御に関与し,PPBの形成と成熟を制御することを明らかにした.また,KATANIN 1は紡錘体およびフラグモプラストの回転運動と位置関係に関与していることが明らかになった.

興味を持たれた方は是非ご参加ください. 飯塚駿作