2021年度後期 第14回 細胞生物学セミナー
日時:12月21日(火) 16:30〜 場所:Zoom
Immunofluorescence localization of the tubulin cytoskeleton
during cell division and cell growth in members of the Coleochaetales (Streptophyta)
数種のコレオケーテ目(ストレプト植物)における細胞分裂と細胞成長中の
チューブリン細胞骨格の免疫蛍光局在
Doty, F., Betzelberger, M., Kocot, M., Cook, E. (2014)
Phyc. Soc. America 50; 624
車軸藻綱の緑藻類は、陸上植物と共通の祖先を持つことが多くの先行研究によって示されている。コレオケーテ目を含む車軸藻綱の緑藻藻類の研究は、近縁な陸上植物と共通する特徴の進化の歴史を明らかにできる可能性がある。有糸分裂と細胞質分裂は、複雑な生物の成長に必要な基本プロセスである。この2つのプロセスは、陸上植物と車軸藻綱藻類、非車軸藻綱緑藻では大きく異なる。本研究では多様な形態を持つコレオケーテ目における有糸分裂、細胞質分裂、成長時のチューブリン細胞骨格を調べた。フラグモプラストの形成と、細胞成長に関わる微小管パターンを明らかにするために、免疫蛍光染色によって可視化したチューブリンと、DAPI染色した核、カルコフロール染色した細胞壁を蛍光顕微鏡を用いて観察した。まず、コレオケーテの3つのサブグループに属する種と、その姉妹属であるChaetosphaeridiumを調査した。その結果、4つの分類群ではフラグモプラストなどの細胞骨格が観察された。フラグモプラストは陸上植物と同じ形態で、分裂面に垂直に並んだ微小管から構成されていた。また、細胞内の液胞の位置によってフラグモプラストの形成が遅れている細胞が見られた。生細胞の微分干渉顕微鏡観察から、細胞板が液胞を横切って形成されるとき、液胞の影響を受けにくい部位では細胞壁が正常に作られ、液胞が目立つ部位では液胞の存在によってその進行が遅くなる様子が観察された。液胞は細胞質分裂の妨げになっていなかったが、液胞が細胞分裂に与える影響は、細胞分裂時の液胞の位置や形状に応じて異なった。これはモデル顕花植物であるシロイヌナズナArabidopsisの液胞の多い細胞において報告されているような極性細胞質分裂を示していた。また細胞壁のカルコフロール染色からは、コレオケーテ目のどの分類群においても細胞壁が細胞の特異的な領域から直接的に成長することが確認された。娘細胞は、細胞壁の一部の領域を介して親細胞の細胞壁とつながっていた。コレオケーテ目の種が、細胞の拡大・伸長に続いて核が細胞質分裂の位置に移動してから有糸分裂と細胞質分裂が始まるのに対し、細胞の伸長と核の移動が有糸分裂と細胞質分裂の後に起こるという珍しい成長パターンを持つChaetosphaeridiumでは直接的な細胞壁の成長が電子顕微鏡によって確認された。Coleochaete orbicularisとColeochaete solutaの細胞では、微小管は無秩序に配向していた。整列していない微小管パターンは、細胞に拡散成長のメカニズムが存在することを示している。拡散成長では、通常、細胞は無指向性で全体的に拡大する。C. orbicularisの細胞は隣の細胞に拘束されているため、拡散成長によって葉状体が主に外側に向かって膨張する。C. solutaの周辺細胞では、拡散成長が、細胞の形状や細胞分裂面の向きがより多様であることや、葉状体の形状があまり厳密に定義されていないことに寄与すると考えられる。次にColeochaete irregularisとChaetosphaeridium globosumのフィラメントを伸ばしている細胞では、成長していない部分では微小管の無秩序なパターンが生じているが、成長が続いている末端では微小管が成長の方向に沿って並んでいるのが観察された。C. irregularisとC. globosumの伸長細胞は、菌類や他の車軸藻綱藻類などの先端成長時に見られるチューブリン配向を示した。一方、陸上植物や褐色藻類の伸長細胞に見られるようなフープ状の微小管配向は見られなかった。本研究を含め様々な種で研究されたフラグモプラストの存在は、フラグモプラストが関与する細胞質分裂がコレオケーテ目の共通の祖先で発生したという仮説を支持する。
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成瀬真友香