2021年度後期 第16回 細胞生物学セミナー
日時:12月11日(火) 16:30〜 場所:Zoom開催
A deep learning-integrated micro-CT image analysis pipeline for quantifying
rice lodging resistance-related traits
Wu, D., Wu, D., Feng, H., Duan, L., Dai, G., Liu, X., Wang, K., Yang, P., Chen, G., Gay, A.,
Doonan, J., Niu, Z., Xiong, L., Yang, W. (2021)
Plant Communications 2, 100165,
イネの耐倒伏性関連形質定量化のためのディープラーニングを統合した
マイクロCT画像解析パイプライン
イネの収穫量や機械的収穫効率を低下させる「倒伏」は一般的な問題である。イネの構造は、栽培化の重要な側面であり、生産性を制限する大きな要因でもある。理想的な稲の稈の構造は、耐倒伏性を向上させるために非常に重要である。しかし、従来の稈形態指標の測定方法は破壊的で、時間がかかり労力を必要とする。本研究では、筆者らが先行研究で開発したマイクロCTとRGBカメラを組み合わせたハイスループットなイメージングシステムと、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network: CNN)を用いて,ピクセルごとに色や濃度だけではなく意味づけを行うセマンティック・セグメンテーションのためのディープラーニングアルゴリズムであるSegNetを用いて、24種類のイネの稈の形態学的な特徴と耐倒伏性関連形質を抽出できるハイスループットマイクロCT画像解析パイプラインを開発した。
曲げ応力への抵抗が高いものから低いものまでを含む104のイネのindica系統をプラスチックポットで栽培し、成熟期(播種後約120日)の株から、マイクロCT-RGBイメージングシステムを用いて画像を取得した。CT撮影後、倒伏試験器を用いた曲げ応力の測定と、稈の直径についてはノギスを用いた手動測定に加え、RGB画像からNI Vision Assistantソフトウェアを用いた手動測定(RGB-manual)も行った。また、CT撮影後、各サンプル80スライスの再構成CT画像を取得した。再構成CT画像から200個のイネの茎の断面をランダムに選択し、元画像に加えそれらを回転させたり画素のグレースケール値を変化させた画像を加えてデータ増強を行い、SegNetを用いて学習させたCulms - SegNetモデルを作成した。学習されたCulms-SegNetモデルにより、104サンプル8320枚の画像の自動セグメンテーションを行った。ノイズ除去し、稈の3D画像を取得し、稈の形質を算出した。ノギスを用いた手動測定値と自動測定値で、稈の長軸長、短軸長、稈壁の厚さを比較したところ、平均絶対パーセント誤差はそれぞれ6.03%、5.60%、9.85%、R2値は0.799、0.818、0.623 、二乗平均平方根誤差は0.518 mm、0.423 mm、0.104 mmであった。また、成熟期と分げつ期(播種後約60日)の稈の24の形態形質を用いて曲げ応力のモデルを構築したところ、R2値はそれぞれ0.722(稈断面積と最大稈角度の2形質で手動測定の72.2%を説明)と0.544(マイクロCTとRGBの5形質 で54.4%を説明)であった。このモデリング結果から、本手法は生育初期段階でも非破壊的に耐倒伏性を予測できることが示された。さらに、曲げ応力とシュートの乾燥重量、稈の密度、干ばつ関連形質との関係を評価したところ、曲げ応力への抵抗が高い植物は、バイオマス、稈の密度、面積がやや高いが、干ばつ耐性は劣ることが分かった。
本研究では、ディープラーニングを統合したマイクロCT画像解析パイプラインを開発し、イネの稈の表現形質を高速(1株あたり4.6分)で正確に定量化することができた。また、稈の曲げ応力に関係する稈壁の厚さの分布を3次元的に可視化することができ、本手法は、従来の地上50 cmの1点の位置での手作業による曲げ応力評価方法より精度が高い可能性が示唆された。このパイプラインは、今後、イネ集団の耐倒伏性のハイスループットスクリーニングに有用であると考えられる。
興味を持たれた方は是非ご参加ください(zoomのURLをお知らせします)。千龍海夕