2021年度後期 第回 細胞生物学セミナー

日時:1019()  1600〜  場所:Zoom

Actin Filament Disruption Alters Phragmoplast Microtubule Dynamics during the

Initial Phase of Plant Cytokinesis

Maeda, K., Sasabe, M., Hanamata, S., Machida, Y., Hasezawa, S., Higaki, T.(2020)

Plant Cell Physiol. 61(3):445-456

 

初期細胞質分裂におけるアクチン繊維の破壊はフラグモプラストの微小管動態を変化させる

 

植物細胞は、細胞分裂の際に細胞中心から親細胞壁へと遠心的に拡大する細胞板によって分離される。この細胞板は、微小管、アクチン繊維、膜小胞からなる複雑な構造体であるフラグモプラストによって形成、拡大されることが知られている。フラグモプラストには双極性の微小管が含まれており、プラス端が分裂部位またはその近くに位置するように重合して骨組みを形成する。これにより、ゴルジ体由来の小胞がプラス端に向かって輸送され、細胞板が形成・拡大される。アクチン繊維は、植物の後期の細胞質分裂において、細胞板の拡大や誘導に重要な役割を果たしているが、初期に関与しているかは明らかでない。筆者らはこれまでに、ライブセルイメージングと定量的な画像解析を用いて、細胞質分裂の初期に娘核近傍から出現したアクチン繊維が、細胞質分裂の後期には徐々に拡大する細胞板に近づくことを明らかにした(Higaki et al. 2008)。本研究では、アクチン繊維を薬理学的に破壊することがフラグモプラスト微小管の初期組織に及ぼす影響に着目し、フラグモプラスト微小管の機能的マーカーとしてNACK1NACK2NPK1の動態を調べた。細胞周期を同調させたタバコ培養細胞BY-2株を用い、アクチン重合阻害剤であるlatrunculin B (LatB)で処理した後に、透過型電子顕微鏡(TEM)やスピニングディスク共焦点レーザー顕微鏡下で細胞を観察した。

アクチン繊維を薬理学的に破壊することが植物の細胞質分裂装置の微細構造に及ぼす影響を調べるため、薬剤処理後の細胞をTEMで観察した。その結果、コントロールでは細胞板膜小胞が赤道面に沿ってクラスター化して整列していたのに対し、LatB処理した細胞では細胞板膜小胞が分散し、細胞板膜小胞のサブクラスター間に隙間が見られた。次にライブセルイメージングによりフラグモプラスト微小管の形成と拡大を観察した。その結果、コントロールの細胞では中央部が収縮した後期紡錘体の内部にフラグモプラスト微小管が出現したのに対し、LatBを処理した細胞では、フラグモプラスト微小管の中央部の収縮が起こらず広がっていることが明らかになった。さらにLatB処理が、細胞板に局在し細胞板の拡大に重要な役割を果たすNACK1およびNACK2キネシンとNPK1 MAPKKKのフラグモプラスト微小管の機能マーカーに与える影響を調べた。ライブセルイメージングとキモグラフ解析の結果、アクチン繊維の破壊は、NACK1キネシンのみの蓄積するタイミングを早めさせることがわかった。このことは、フラグモプラストには機能的に異なる2種類の微小管が存在することを示唆している。

以上の結果から、植物の細胞質分裂の初期段階において、アクチン繊維がフラグモプラストの微小管を制御していることが明らかになった。

 

 

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