2022年度前期 第2回 細胞生物学セミナー
日時:5月24日(火) 17:00〜 場所:Zoom
The preprophase band-associated kinesin-14 OsKCH2 is a processive minus-end-directed microtubule motor
Tseng, F., Wang, P., Lee, J., Bowen, J., Gicking, M., Guo, L., Liu, B., Qiu, W.
Nat. commun. 9; 1067 (2018)
PPBに付随するキネシン-14であるOsKCH2は
マイナス端方向に進行するプロセッシブな微小管モーターである
キネシンは細胞内において, 微小管に沿った物質輸送を担っている. 一般的なキネシンは微小管プラス端方向への運動機能を有しているが, 植物はダイニンという微小管マイナス端方向に移動するモータータンパク質を持たないため, 微小管マイナス端方向に移動することができるキネシン-14が多く発達している. キネシンをはじめとするモータータンパク質は, 本来, 一分子で単一微小管上を数 µmずつ連続的に移動する”プロセッシブ性”を持つが, キネシン-14は一般的に非プロセッシブなモータータンパク質であり, 単一分子では運動できず, ホモ二量体やヘテロ二量体を形成して微小管上をプロセッシブに運動する. 一方, 植物ではホモ二量体を形成してプロセッシブな運動性を持つキネシン-14は見つかっていない. また, いくつかの陸上植物で, アクチン結合ドメインであるCHドメインを持つキネシン-14であるKCHsが見つかっている. 本研究では, イネ由来のKCHタンパク質であるOsKCH2の系統的な特性評価を行った.
OsKCH2はN末端にCHドメインを, 中央に微小管結合モータードメインとそれを挟むように2つのcoiled-coil構造(CC1およびCC2)を持つことが分かっている. まず, 免疫蛍光抗体法によりOsKCH2の細胞内局在を調べた. その結果, 細胞分裂前期の細胞膜において, 主に微小管やアクチンフィラメントを含む植物特異的な環状構造である分裂準備帯(PPB)と類似した局在を示した. さらに, OsKCH2と微小管, アクチンフィラメントの相互作用をin vitroで観察すると, ATP存在下でOsKCH2がアクチンフィラメントを微小管マイナス端方向に輸送することが示され, OsKCH2が微小管とアクチンフィラメントと同時に相互作用できることが示唆された. 次に, GFP-OsKCH2を作成し運動特性を観察すると, 単一微小管上でプロセッシブな運動をしない一般的なキネシン-14と異なり, GFP-OsKCH2は微小管マイナス端方向にプロセッシブな運動を示した. さらに, OsKCH2がホモ二量体としてプロセッシブな挙動をすることを確認するために, GFP-OsKCH2の光退色パターン観察とを行った. その結果, GFP-OsKCH2は他の二量体キネシンと同様の光退色パターンを示した. 加えて, GFP-OsKCH2をショ糖密度勾配遠心法で分画し, SDS-PAGEにより検出した結果, バンドサイズは単量体のおよそ二倍の分子量であり, OsKCH2はホモ二量体としてプロセッシブな挙動を示すことが分かった. 次に, OsKCH2のホモ二量体形成に重要な領域を明らかにするためにCC1とCC2をそれぞれ欠損したGFP-OsKCH2を作成し, ショ糖密度勾配遠心法による分画を行った. その結果, CC1欠損GFP-OsKCH2が単量体として分離されたことから, CC1が二量体形成に重要であることが明らかになった. また, CC2欠損GFP-OsKCH2は他のキネシン-14と同様, 非プロセッシブな挙動を示した. さらに, CC2が独立して微小管に結合する能力を有するか調べると, CC2のみは微小管と弱く相互作用するだけだったが, CC2欠損GFP-OsKCH2と欠損していないものを比較すると, CC2を有するGFP-OsKCH2の方が微小管と強力に結合していると分かった. OsKCH1は他の非プロセッシブなキネシン-14と同じ挙動を示すため, OsKCH1のCC2領域にOsKCH2のCC2配列を置換しキメラタンパク質を作成すると, OsKCH1がプロセッシブな挙動を示すことが確認され, OsKCH2のCC2がプロセッシブな運動を可能にしていることが示された.
以上の結果から, OsKCH2はin vivoでPPBを特異的に修飾し, in vitroでは微小管に沿ってアクチンフィラメントを輸送し, さらに, 二量体を形成して微小管上をプロセッシブな運動するキネシン-14であることが明らかとなった.
興味を持たれた方は唐原先生か玉置先生にご連絡ください. ZoomのURLをお伝えします.
栗田紘生