2022年度前期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:67() 1630〜 場所:Zoom開催

3D characterization of the complex vascular bundle system of Hakea fruits

based on X-ray microtomography (μCT) for a better understanding of the opening mechanism

Fischer, M., Beismann, H. (2022)

Flora, 289: 152035

開裂メカニズムの解明に向けたX線マイクロトモグラフィ(μCT)に基づく

Hakea 果実の複雑な維管束システムの3D特性評価

 

Hakea salicifolia Hakea sericea の果実は、顕著な木質化によって特徴付けられ、ヤマモガシ科の中では珍しく、腹縫線と背縫線を経由して開裂する。この2種は、種子の放出に何らかの外部要素が必要(Serotiny)な種であり、種子の放出に山火事が寄与していることが知られている。また、この開裂メカニズムには、組織の違いや維管束の方向が関係していると考えられており、それらの2次元的な配置は、光学顕微鏡による断面画像からある程度明らかとなっている。本研究では、それらの3次元的な構造を提示し、それらがHakea 果実の開裂へどのように寄与しているのかついて議論することを目的とした。

まず、H. salicifolia H. sericea の果実を採取し、μCTシステムSkyScan 1272および1273を用いて、果実のX線画像を取得した。取得したX線画像から、ソフトウェアNRecon Feldkamp アルゴリズムを用いて、3D画像を再構成した。再構成した3D画像を、ソフトウェアFiji を用いて縮小・回転などの処理をし、Dragonfly ソフトウェアを用いてセグメンテーションした。自動セグメンテーションのために、まず、13枚のスライスを手動でラベリングし、多クラス交差エントロピー誤差関数によってU-Net 深層学習モデルを訓練するために使用した。得られた予備的なモデルを用い、追加スライス画像を自動セグメテーションし、誤ってラベリングされた箇所を手動で修正した。このプロセスを9枚の完全なスライス画像が得られるまで繰り返し、自動セグメンテーションの精度を高めた。また、両種の剳ミの収縮率測定を行った。

セグメンテーションから得られた3Dレンダリング画像から、H. salicifolia の剳ミにおいて、ダブルドーム状のネットワークを構築する相互接続された維管束を、H. sericea の剳ミにおいてドーム状のハニカム構造を構築していることが初めて明らかとなった。また、両種の維管束は剳ミの間に相互接続を示さず、腹側と背側に所定の破断組織のための隙間が空いていることが示された。収縮率測定から、両種とも横方向の収縮は弱いが、他の2方向の収縮は強いことが示され、横方向と比較し、近位-遠位方向の収縮は、H. sericea で約8倍、H. salicifolia で約4倍大きいことが明らかとなった。

観察された木部繊維の構造は、機械的安定性を高めると同時に、開裂メカニズムを可能に、もしくは促進するために必要であると考えられた。また、火災後などに果実が開裂するのは、2つの剳ミの異方的な収縮によるものであることが示唆された。今後、開裂メカニズムを解明することで、希望の機械的特性を持った繊維複合材料の設計など、技術的なプロダクトへの転用が期待される。

 

 

 

興味を持たれた方は是非ご参加くださいzoomURLをお知らせします)。千龍海夕