2022年度後期 16 細胞生物学セミナー

日時:1213日(火)16:30〜 場所:Zoom

Primary root response to combined drought and heat stress is regulated via salicylic acid metabolism in maize

Yang, X., Zhu, X., Wei, J., Li, W., Wang, H., Xu, Y., Yang, Z., Xu, C. and Li, P. (2022)

BMC Plant Biol. 22, 417

乾燥および熱の複合ストレスに対するトウモロコシの一次根の応答はサリチル酸代謝を介して制御される

 

 植物の成長および作物の収量に影響を与える非生物的ストレスの負の影響は、世界中で農業に大規模な損害を与える主な原因となっている。この非生物的ストレスが植物の生育に与えるダメージは多様であり、自然界での非生物的ストレスは独立したものでないことが多い。たとえば、水不足と熱ストレスは植物の成長と水利用に影響を与え、作物に深刻な被害をもたらす。そして、根系は植物を物理的に支えるだけでなく、養分や水分の吸収にも重要な役割を果たし、ストレス応答とも密接な関係がある。特に一次根は発芽時に最初に現れる器官であり、ストレスシグナルを最初に感知する器官でもある。本研究では、主要な作物であるトウモロコシの乾燥・熱耐性について新たな知見を得るために、メタボロミクス解析とトランスクリプトミクス解析を組み合わせることで、乾燥(D)、熱(H)、乾燥と熱(DH)の各非生物的ストレスに対する一次根の応答機構を調べた。

 3日齢のトウモロコシ実生にストレス処理を施したところ、一次根長は処理後9日目にD処理(PEG8000: - 0.8 MPa)で24.83%、H処理(昼: 40℃、夜: 35℃)で30.45%、DH処理で41.33%有意に減少した。次に、非生物的ストレスを受けた一次根の代謝産物の変化を調べるため、3日齢の実生にストレス処理を施し、ストレス処理24時間後の一次根を採取してGC-MS分析を行った。その結果、D処理下では10種類の代謝産物の含量が増加し、31種類が減少した。H処理下では5種類の代謝産物量が増加し、48種類が減少した。DH処理下では6種類の代謝産物量が増加し、44種類が減少した。そして、発現量の異なっていた代謝産物は合計72種類検出され、KEGG パスウェイ解析により、植物ホルモンシグナル伝達、二次代謝産物の生合成、フェニルアラニン代謝など、85の代謝経路に関与していることが分かった。その中でも、サリチル酸(SA)、シキミ酸、フェニルアラニンの濃度はストレス処理後に減少していた。続いて、トランスクリプトーム解析を行い、遺伝子プロファイルを調査したところ、各ストレス下でそれぞれ 207 個(D)、967 個(H)、5,036 個(DH)の異なる遺伝子発現が確認され、これらの遺伝子はグルタチオン代謝、 植物ホルモンシグナル伝達、カロテノイド生合成などの経路の制御に関連していることが明らかとなった。また,SAの代謝やシグナル伝達に関わるいくつかの主要な遺伝子の発現量が,ストレス条件下で変動していた。また本研究では、ストレス下でほとんどのTGA転写因子の発現が減少し、NPR1Nonexpressor of Pathogenesis-Related 1)の発現が増加していた。さらに、SANPR1によって誘導されるPR1pathogenesis-related protein 1)はストレス処理下でダウンレギュレートされていた。生物におけるSAは、TGANPR1の相互作用を阻害し、ROSの酸化還元関連遺伝子の発現を弱め、ROSの酸化還元状態の回復を阻害し、植物の成長・発達に影響を与えることが明らかにされている。したがって、ストレス処理によりSAが減少すると、下流のTAG転写因子の発現およびTAGNPR1の結合に影響を与え,これによってPR1の発現が影響を受け,トウモロコシの非生物的ストレスに対する耐性が低下している可能性がある。本結果は、トウモロコシの一次根における非生物的ストレス耐性の応答機構を明らかにするための理論的根拠をもたらすものである。

 

興味を持たれた方は是非ご参加ください。ZoomURLをお知らせします。 小出みなみ