2024年度前期 第1回 細胞生物学セミナー

日時:416() 1630〜 場所:Zoom

Segmentation of roots in soil with U-Net

Smith, A, G., Petersen, J., Selvan, R., and Rasmussen, C, R. (2020)

Plant Methods, 16: 13.

U-Netによる土壌中の根のセグメンテーション‐

 

 土壌中の根の表現型解析は根をそのまま観察できないため困難である.この問題に対して,非破壊的にモニター可能なリゾトロン法が有効であるが,取得された画像中の根のラベリングに多くの時間がかかることが制限となる.そこで,本研究は多くの検出・認識タスクで優位な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用したディープラーニングを活用し,自動的な根セグメンテーションシステムの開発を目的とした.本研究では大量のトレーニング画像の取得が困難な場合に有用であるU-Net CNNエンコーダ-デコーダアーキテクチャを使用し,それにより得られた自動セグメンテーションの精度はFrangi vesselnessフィルター(以後Frangiフィルター)を用いてた場合の精度と比較し評価した.

 リゾトロン法で撮影されたチコリー(Cichorium intybus L.)の画像の中から50枚(3991×1842 px)を手動でラベリングした.不適切な2枚の画像を除いた48枚のラベリング画像をディープラーニングシステムのトレーニングセット(19),検証セット(19),テストセット(10)に分割した.トレーニングセットは重み(パラメータ)の調節によるCNNの最適化に使用した.検証セットはトレーニング中のシステムの正確性を確認するために使い,最適化されていない重みを調整した.テストセットはトレーニング後に未知のデータの評価のために用いた.GPUを使用したテンソル演算を行うオープンソースの機械学習ライブラリであるPyTorchを使用してU-Net CNNを実装した.本研究においては,バッチサイズが小さいため活性化関数ReLU出力の後にグループ正規化を行い,グループ正規化と相性が悪いドロップアウトは行わず,Heの初期化を行った.CNN572×572 pxのタイルを入力し,それぞれのタイルについて中心の388×388 px領域のセグメンテーションを出力させた.各タイルは,画像周辺部をミラーリングにより拡張(パディング)した.根を含む画像のみに限定し最大40個のタイルを抽出した.バッチサイズは4に設定し,検証ではすべてのタイルを使用した.U-NetFrangiフィルターの精度の指標には適合率と再現率が重視されるF1スコアを用いた.また,U-Netから出力されたセグメンテーションにおいて,根長と,従来リゾトロン法で根長の指標として用いられてきた,線交差法によるメーターあたりの交差点数(root intensity)との相関を測定した.

 U-NetFrangiフィルターの両システムにおいて3種のデータセットのセグメンテーション化に成功した.U-Netによるセグメンテーションの根を含む各画像のF1スコア,適合率,再現率それぞれの平均,標準偏差はFrangiフィルターの結果と比較して優れた.U-Netでは,全画像に占める根の領域の平均予測値はFrangiフィルターの2倍以上であり,つまりFrangiフィルターの2倍多くのピクセルを根と予測した.F1値はFrangiフィルターよりU-Netで高く,U-Netでは根ピクセルの見逃しが減る傾向がみられ,再現率が高くなった.また,U-Netセグメンテーションと線交差法でのroot intensityのスピアマン順位相関係数が0.9848であったことから,両指標の相関が非常に高く,U-Netのセグメンテーションが手動ラベリングに近い正確さで根量や分布を推定できることが示された.

 本研究ではU-Net CNNを用いた根の土壌からのセグメンテーションに成功し,U-Netを用いたセグメンテーションと手動のセグメンテーションで根の長さの指標が近似することが示された.また,両者の高い相関係数は,訓練されたU-NetRGB写真で根と土壌を効果的に識別できることを示唆し,未知のテストセットでも安定した性能が示されることを支持する.今後の研究では,ラベリングの精度の向上や異なる植物種への適用を目指しており,画像処理や転移学習の新たな手法を調査する必要がある.

興味を持たれた方は是非ご参加ください。Zoom URL をお知らせします。八木原直樹